46 / 65

第46話 熱情深夜

 押し付けられるそれは治まるどころかますます熱を増すようで、服越しでも恐ろしく硬くなっていることが分かる。偶然なのかわざとなのか、ちょうど尻の辺りに触れてくる感覚が堪らない。 「……おい、遼……ムリだろ、それ……」 「何が――無理だって?」 「だから……ンなもん、そう簡単に治まんねえだろっつってんの……!」 「大丈夫、俺の息子だ。その内ちゃんと言うこと聞くさ」 「ンな、クセえジョーク飛ばしてる場合じゃ……ねっだろ……って」  そう言うや否や、紫月はスルリと遼二の腕の中から抜け出して、布団の中へと潜り込んだ。そして下着ごと遼二のスウェットを引っ張り下ろすと、ガチガチに硬くなっているそれを舐め取るように咥え込んだ。 「……ちょッ、紫月てめっ……何……!?」 「いーから、ちょいおとなしくしてろって」 「……ッ! く……そ、こんなん……」  堪らないといったように遼二は顔をしかめ、腹から腰から這い上がってくる強烈な快感に唇を噛み締めた。何よりも紫月が自らこんなことをしてくれることが、信じられないくらい嬉しくもあって、逆らえない快楽に思わず漏れそうになる嬌声を抑えるだけで精一杯だった。  愛しい想いのままに布団の中に手を突っ込んで、紫月の髪をグシャグシャと撫でる。 「紫月……なぁ、おい……」 「ん……? もう出す?」  布団の中でこもった声も艶めかしい。 「……ッ、違えよ……」  遼二は自らの雄にしゃぶり付いている紫月を引き剥がすと、 「ンなことされたら我慢できねえ……。ちょっと隣ン部屋行かね?」 「隣って、物置にしてるとこ?」 「ああ……」  めくられた掛け布団の隙間から遼二の虚ろな瞳が我慢できないと訴えている。あまり見たことのない彼のそんな表情は堪らなく淫らだ。紫月はより一層顔を赤らめながら、「分かった」と素直に同意した。  こっそりと部屋を抜け出し、物置の三畳一間に移動して、狭く真っ暗な中で二人は逸ったように抱き締め合った。貪るようなキスを繰り返し、ますます硬く熱くなった雄同士を擦り付け合う。どちらからともなく腰と腰とを掴み合って、まるで互いのもので抜かんとばかりに求め合った。 「……紫月、ちょっとそこ……腰掛けろよ」  大きめの木箱の上へと紫月を座らせると、遼二は先程のお返しとばかりに紫月の下着をずり下ろした。彼のソレも硬く勃ち上がっていて、勢いよく飛び出した雄からは、ぬめった透明の糸が下着へと絡み付いている。 「お前ンも――もう出てる」 「バッ……カやろ……。ンなとこ観察すんなって……の!」 「暗くてよく見えねえのが残念だけどな? 濡れてんのは分かる――」 「……ッの……ヘンタイ」 「だよな?」  遼二は笑うと、先端を濡らしている蜜液ごと味わうように深々と咥え込んで、舐め上げた。 「……ッ……!」 「すっげ甘い……。お前、甘党だからかな? 汁も甘い気がする」 「ンなわきゃ……ねっだろが! サムい冗談こいてんじゃね……っての」 「冗談なんか言ってねえさ。マジで……甘い。もっと……出せねえの? もっとたくさん……舐めてえんだけどな」  吐息交じりに雄全部を包み込むように深く咥え込まれて、キュウっと音がするくらいに吸い上げられる。 「バッカやろ……牛の乳じゃねんだから……って! や……っべ、ンなんしたら……遼二ッ!」 「出していいぞ?」  巧妙な舌使いにゾクゾクと唸る快感が抑えられない。ビクりと内股が震え、本当に達してしまいそうだ。紫月は遼二の髪をグシャグシャと撫で回す音で、自らの嬌声を隠さんと悶えた。 「遼……俺もしてえよ……お前の舐め……てえ……」 「……嬉しいけど、ここ狭えからムリだろ」 「けど……あッ……!」  紫月の雄を味わいながら、自らのモノももう片方の手でしごいていた遼二は、互いの絶頂が近いことを悟ってゆるりと立ち上がった。 「紫月、ほら……お前も立ってみ? 一緒にイこうぜ」  半ば腰が抜けたようにして反応じまくっている紫月を抱え上げて立たせると、互いの雄を抱き合わせにして擦り上げた。 「な、こうしてっと……思い出すよな? 初めてお前とこれ……ヤった時ンこと」 「……ッはぁ、……遼……」 「覚えてんだろ? 初めて抜き合いした……一年の夏キャンプん時さ、すっげ懐かしい……」 「……ん、もち、覚えてっけど……」  紫月はもう限界寸前で、相槌を打つのもままならないようだ。息遣いといい、押し殺した嬌声といい、酷く淫らで、その表情は陶酔しきっているようだ。暗くてよく見えないのが恨めしいほどだった。 「……遼……出る、もう……もたね……」  まるでしがみ付くように両腕を回して抱き付いてくるのが、たまらなく愛おしかった。遼二は片方の手で紫月の腰を引き寄せると、 「俺も……イきそ……紫月……ッ、いい……か……」 「ん……」  絶頂を迎えると同時に、愛しい気持ちを乱暴なくらいのキスに代えて、二人は互いの腹を濡らし合った。 ◇    ◇    ◇ 「もう真夜中、つか丑三つ時ってやつ? 寝る時間、あんましねえな」 「誰かさんが急に発情すっからだろ」 「しゃーねえだろ。俺ン息子は根が正直なんだ」 「出たよ、オヤジギャグ! 息子つか、てめえがエロいだけだろーが……」  互いの腹や腕をつつき合いながら、物置部屋を出て部屋へと戻る。もう深夜もいいところだから、階下の両親を起こさないように忍び足だ。すっかり忘れ掛けていたが、自室には例の指輪の男もいることを思い出して、二人はより一層忍び足で部屋の扉に手を掛けた。 「あいつ、まだ寝てるよな?」 「ああ、多分……」 ――が、一歩中へ入ると、ベッドの上で何かが動く気配を感じて、二人はハッと瞳を見開いた。

ともだちにシェアしよう!