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第58話 驚愕の巡り会い

「これ……、この指輪、どうしたんだ?」 「指輪……?」  男は突然のことに驚きつつも、不思議顔で遼二を見つめた。 「あの……これが何か……?」 「あんた……これ、いつもしてるのか?」 「ええ。これは僕の家に代々伝わる物なんです。男のくせにこんなのをして、ヘンに思われることも多いのですが――」照れたように苦笑したが、遼二にしてみればそれどころではない。  家に代々伝わる指輪――  確か、倫周という男は、例の指輪を”先輩”にもらったと言っていた。ということは、今目の前にいるこの男こそが――その先輩ではないのか――?  この男の品の良い感じといい、良家の子息が通う白帝学園のイメージともぴったりだ。遼二は思わず今し方もらったばかりの名刺を凝視してしまった。 「粟津帝斗……っていうのか、あんた?」 「ええ、そうです」  名刺の住所を確認すると、確かに白帝学園がある地域だ。 「あんた、それと同じ指輪を……つか、正確には色違いのやつだけど……それを誰かにやらなかったか……?」  堪らずに、遼二はそう訊いた。すると、男の方も驚いたようにして身を乗り出した。 「あの……あなた、もしかして倫周をご存知なのですか?」 「え――!?」 「実は僕……彼を捜して此処へ来たんです。彼は僕の学園の後輩なのですが、現在行方不明になっていて……。この辺りで彼を見掛けたという情報を聞いたものですから……」  倫周を捜しているだと――?  ということは、今度こそ本物の”指輪の男”というわけか。遼二は今にも足が竦んでしまうくらいに驚き、衝撃を受けていた。すぐには返答のひとつも出てこない。  そんな様子を不思議に思ったのか、男の方は首を傾げながら顔を覗き込んでくる。 「あの……倫周という後輩はこの指輪と同じものをしているはずなんです。あなたのおっしゃるように色は違いますが、彼のは赤で……」  遼二は何と返事してよいか、未だに相槌のひとつも打てずに硬直状態だ。だが粟津帝斗という男の方は酷く逸った様子で返事を待っている。 「あの……」 「あ……ああ、すまねえ。えっと、その……俺が訊きてえのは赤じゃなくて……黒い指輪なん……だけど」  どう答えるべきが迷った末、咄嗟に口をついて出てしまったのは、まさに核心のひと言だった。

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