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第8話 魔法

 ロイが発作を起こした数日後、スタッフステーションの自分のデスクでパソコンに向かっていると、通りかかった女性看護師が声をかけてきた。 「北見先生、ロイくん、あれから具合いいみたいですね」 「ああ。うん。そうだな」  数日前の発作が嘘のようにロイは元気にしている。 「でも、ロイくんって本当に北見先生に懐いているんですねー」 「え?」  俺が首を傾げると、看護師の女性はクスクスと楽しそうに笑う。 「さっき、血圧と体温を測りに行ったとき、ロイくん言ってましたよ。『北見先生は魔法が使えるのかな』って」 「? 魔法?」 「ええ。『この前の発作のとき、北見先生が頬を撫でてくれたら、苦しいのも痛いのもスウッって楽になったんだよ』って。『まるで魔法みたいだった』って」 「ロイがそんなことを?」 「ええ。かわいいですねー。本当ロイくん」 「魔法、か」  本当に可愛いことを言うんだね、君は。  ますます溺れてしまいそうで、自分の気持ちが怖いくらいだ。  でも。  本当に魔法が使えたら……たった一度だけでいいから魔法が使えたら。  君を救ってあげられるのに。

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