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第10話 君だけは

 可愛らしい行動にクスクスと笑っていると、シーツから少しだけ顔を覗かせたロイが、意を決したように質問をして来た。 「北見先生、……彼女、いない?」 「いないよ」  そう答えたとき、体に激しい痛みが走った。    ……やばい。  発作だ……。  「北見先生?」  俺の異変に気付いたのか、ロイが上半身をシーツから出し、こちらを心配そうに見上げてくる。 「どうかしたの?」 「な、んでもないよ……」  突き上げてくるような痛みに耐えながら、無理に笑って見せる。 「ちょっと、行かなきゃいけないところが、あるから。ロイ……またあとで、来るから、ね……」  なんとかそれだけ口にすると、俺は足早にロイの病室から立ち去った。  発作を抑えるための薬を自分へ投与しながら、ロイの笑顔を思い浮かべる。  こんな思いをするのは俺だけで充分だ。  ロイ、ロイ……君だけは救ってあげたい……。

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