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第12話 誕生日前日2

 頬を膨らませ、うるうる瞳を潤ませてわがままを言うロイに、俺は考え込んだ。  まずは第一の問題……ロイの容態が急変したらどうするか?  どうしてもの場合は病院へ連れて帰ってくるしかないけど、小さな発作なら投薬で対処できるか……。  第二の問題……俺が発作を起こしたらロイに隠し通せるか?  これは、今まで通りにするだけだ。  ロイに俺も同じ病気なんだということは決して悟らせない。  最後の問題として、外泊許可が降りるかどうかだけど、院長に頼めば、何とか……ならないか。  とすれば、内緒で病院を抜け出すしかないな。  どんなに無理をしてでもロイのわがままを聞いてあげたいと思うのは、明日が二人で過ごせる最初で最後の誕生日だからだろう。 「……分かったよ。ただし消灯してから病院を抜け出して、起床時間までに戻って来る。それが条件だよ」  うちの病院の消灯時間は二十一時、起床時間は六時。  俺の自宅マンションは病院からゆっくり歩いても十五分くらいだ。タクシーを使えば五分もかからない。  ケーキを食べて、ゆっくりお祝いするだけの時間は充分にあるだろう。  俺が折れると、ロイは今までのふくれっ面はどこへやらパアッと瞳を輝かせて喜んだ。 「ありがとう! 先生」 「でも、明日の夜までに体調が悪くなったら、中止にするから。それだけは覚えておいて」 「大丈夫―」  いつものように屈託なく笑うけれどもロイは体に爆弾を抱えているみたいなものだ。  それはオレも同じなのかもしれないけれど、心臓が弱い分、ロイの方がより急変しやすい。 「北見先生? どしたの? 怖い顔して」  いろいろ考えつい眉間に皺がよってしまっていたようで、ロイがきょとんと訊ねて来る。 「なんでもない。それよりロイ、このことは誰にも内緒だぞ。格造さんにも言っちゃだめだよ」 「言わない。僕と先生だけの秘密だもん」  左手の人差し指を唇に当て、いたずらっ子のような表情でロイがそんな言葉を紡ぐのを聞き、何故か俺は泣きそうになった。

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