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第14話 誕生日当日2

「誕生日おめでとう、ロイ」 「ありがとう、北見先生」  ロイは眩しいくらいの笑みを浮かべたあと、ケーキの上に立てられたローソクを吹き消した。  こんなふうにケーキを前にして、誰かの誕生日を祝うのは一体何年ぶりだろう。  無邪気に喜びまくっているロイを見ていると、かなり無謀だったが、今夜こうして彼の誕生日を俺の部屋で祝うことができて本当に良かったと心底思う。 「ロイ、これ俺からの誕生日プレゼント」  ダイニングの椅子の隅に隠していた綺麗にラッピングされたプレゼントを差し出すと、ロイは戸惑いを見せた。 「え……? でも、こうして先生の家へ連れて来てもらうことが僕がリクエストしたプレゼントなのに、その上にまだ貰うなんて、なんか図々しいっていうか……」 「それはそれ、これはこれ」  俺は強引にロイの手にプレゼントを押し付けた。 「ありがとう……北見先生、開けてもいい?」  俺がうなずくと、ロイは目元に涙を滲ませながら丁寧にラッピングを解いて行った。  俺がロイに用意した誕生日プレゼントはマフラーと手袋のセット。  ブラウン系の落ち着いた色合いのそれはロイには少し大人っぽすぎるが、来年の冬も再来年の冬もどうかこれを身に着けることができるようにとの願いが込められている。  そのとき、俺は君の傍にはいないだろうけれども、君だけには奇跡が起きて欲しいから。

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