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第15話 誕生日当日3
ケーキをあらかた食べ終え、プレゼントも渡し終えたあと、俺たちはダイニングからリビングへと場所を移した。
ロイはリビングを興味深そうに見渡していたが、やがてその視線がある一点でとまる。
「ねー、先生」
「ん?」
「あそこに掛かっている時計、とまってない?」
ロイが視線をとめ、指をさして示すのは、リビングのオフホワイトの壁に掛けられたシンプルな時計だ。
「……ああ……」
俺は時計を一瞥して、すぐに目を反らした。
「……ついめんどくさくてね。腕時計やスマホがあるからあの時計がとまっていても特に不自由は感じないし」
「ふーん?」
「…………」
自分の体が病魔に侵されていると知ったあと、いつの間にかとまっていた時計。
新しい電池を入れて、時計を動かしてやらないのは、まだ生あるうちに時間がとまってしまえばいいと願っているからか、それとも、いつ尽きるか分からない命を抱えているのに時を刻むことを再開させることが虚しいのか。
どちらなのか俺自身にも分からない。
「……でも先生。時計はやっぱり動いているほうが自然だと僕は思うよ?」
ニッコリと微笑むロイ。
いつだって真っ直ぐで無邪気な君。
君の命の灯があと一年足らずで消えてしまうなんて、耐えられない。
オレに残された命も短いけれど、その短い命を削ってでも、ロイ、君にあげたい。
君には生きていて欲しい――――。
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