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12月24日クリスマス
「で、忘れられたのか?」
「な……何が、だい?」
「忘年会。年忘れる会、なんだろ? 今日行って、今年遭った、ナオヤさんに起こったヤなこと……忘れられたのか?」
手首を握る大介の指にも力が入るのを皮膚で感じる。
「なあ、忘れろよ」
手を捩じり上げられると反比例に、直弥は俯いた。
「今年の嫌な事、全部忘れろよ。今年中に。行きたくない会社の事も、時々愚痴ってるナオヤさん虐めるぶちょーの事も、ライバルだった女の子の事も。
アンタを振った……アイツ、ヨーヘイの事も。
全部、忘れろよ」
心の内と同じく歪んだ顔をしている自覚があり、大介に見られたくなくて、直弥は顔を上げられなかった。
大きな掌が近づき、無意識にびくつく。
腕を掴んでいる反対の手で、ぐしゃぐしゃと頭を撫でられ、営業用にセットされた髪を無造作に崩された。
触られ反射的に顔を上げ、ひどい表情のまま大介をみてしまった。
「やっと、俺の事見てくれた。参った。かわいい」
頬に、髪に、キスされる。
「な、何が? どこが……」
直弥は首を振りながら再び視線を背ける。紅潮している事がバレない暗闇で安堵する。
「なあ、お願いだから……みんな、忘れろよ。俺の事以外。今年の事、俺の事だけ、覚えててよ」
大介に問われ、直弥の脳裏にまざまざと、出会った記憶が蘇る。
「正体無くして、金もカードも取られて、こーこーせいなんかに助けられて。ナオヤさんにとっちゃ、ヤな思い出かもしんねーけど。今年遭った事、俺の事だけ、忘れないで。
な、俺の事だけ、忘れないで。頼むよ」
「ダイスケ……俺、」
「ちょっと、君!」
直弥が再び大介を見上げ口を開いた瞬間、僅かな路地の灯りの線上から声がした。
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