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2月9日月曜日

「ナオヤさん! 居るよな!」  ドアが開く音より早く、玄関から大介の大きな声が響いた。   その声に驚き、リビングから廊下に首だけをだし直弥は覗き込む。    そこには、肩で息をしている大介の姿があった。 「やっぱ居た! よかった!」  靴を脱ぎながらも、喋りかけてくる大介が急いている様子で。  不思議に思った直弥は、身体を動かし迎え入れる。 「居るよ。急いでどうしたんだい? メール見なかった? 今日定時で帰るって送ったけど」 「それが今日携帯、昼に充電切れてんの気付いてさ、」  大介の舌打ちが廊下に響く。 「明日十のつく日で、休み前って……明日は直弥さん仕事で遅くなる日だろ!」  直弥の目の前に辿り着き、大介は得意げに問いかけた。 「明日……あぁそうだよ、正解」  直弥が高校の行事に詳しくなってゆくように、大介が自分の生活サイクルを覚えてくれていることが嬉しくて、直弥は自然と顔が綻んだ。 「だから明日会えないかもだから、今日は超ダッシュで来た。アンタも同じ気持ちで早く帰ってきてくれてたら嬉しいなって」  言うやいなや、大介は直弥を抱き締めた。 「そう思って来たけど、これは?」 「あぁ、正解」  図星だった。   大介の力で息苦しい中、直弥は大介の胸の中でくぐもった声で解答する。 「携帯通じなくても、心通じてるから会えた。こっちの方がすごくね?」 「電池切らして返事しなかった言い訳、上手いな」  直弥は大介のかじかんだ大きな手を握り、二人顔を見合わせて笑い合った。  

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