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2月11日水曜日

*  *  *  いつも二人で出掛ける時は、少し遠出をする。  出来るだけ大介の高校の校区外で、なるべく直弥の会社の社員生息範囲外。  直弥が主導権を持って、行き先を決めているが、付き合い始めた頃から今まで、大介は何も理由を尋ねてこない。   人目と世間体を気にしている潜在意識から出ている行動で、直弥自身は少し後ろ暗い気持ちを抱えているけれど。  大介は 少し足をのばしたお出掛け と純粋に喜んでくれている様で、直弥の悲観的な心は救われていた。  休みの夕暮れ、制服もスーツもひしめいていないローカル線。  空いた車両に乗り込み、進行方向を向いている二人掛けの席に駆け込んだ。 「おっ、ラッキー!」  横座り長椅子の形でない車両に、大介は嬉しそうで。直弥も声には出さないけれど、同じ気持ちだ。  腰かけたシートの背の裏で、大介は手探り直弥の手を見つけぎゅっと握った。今日、外で初めて手を繋いだ。  傍から見ても何をしているか、全く気付かれないだろうけど、大介の握力にすこし驚いた直弥は、精悍な大介の顔を盗み見る。  涼しげな顔を崩し、子供の様に嬉しそうな顔をして笑っている。  直弥は無意識に身体を近づけ、寄り添った。  通路側の大介の自由な左手には、買ったばかりの携帯が抱えられている。 「探したなー」 「あぁ」    裏で手を繋ぎながら、何食わぬ顔で普通の会話を二人淡々と始める。   「人気機種とかより、こーいうの探す方が大変だって知らなかったな」 「もう、需要がないからじゃないか。こんなの今時……」  何軒も回って漸く手に入れた。  直弥と同じモデルの携帯。型は新しいらしいが、見た目はそっくりだ。真っ黒でサラリーマンご用達の見本のようなそれ。 「ダイスケ、こんなの好き好んで……」 (俺が使ってるの見て、これのどこが心のツボに入ったんだろう)   直弥は店員の驚いた顔や、何度もこれでいいかと大介が問われている様子も思い出し少し笑った。 「いや、これが良い。有って良かった。安かったし。お年玉遣ってなかったから余裕で買えたし」 「……俺さー、こういうのにきょーみ無いからさ。つい、乱暴に扱っちまうんだよな。だからさ、」  ”聞いてる? ”と言わんばかりに大介は陰で繋いでいる手に二度力を込めた。直弥は頷き、相槌を打つ。 「他のじゃ今までみたくなるだろうけど、ナオヤさんと同じのにしたら、きっと大事にするな……と思って。てか、一緒の欲しかったから。ただそれだけ」

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