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2月14日土曜日

 *  *  *  土曜、通常休みの会社に、直弥は出勤している。  家で引き籠もろうかと思ったが、いつも入り浸っている大介の存在が、そこかしこに感じられて居づらくて。  暫く疎遠になっていた友人に連絡を取って、どこかへ出かけようかとも思ったけれど、誘う本人の癖に全く気が乗っていず……結局最近あみだした、無心になれる雑務整理コースに決定した。 「えらいハードだな」  一頻り雑務に明け暮れた後、デスクで頬杖をついていてぼーっと紙を眺めている。  直弥が手にしているのは、仕事の書類ではなく昨日手渡された合宿スケジュールのプリント。  大介は付き合いだしてから、部活や学校行事のプリントを良くくれる。  最初は「俺、保護者じゃないし……」とその行動が不思議だったが、行事が終わった後プリントで得た情報のおかげで、大介との会話が格段に愉しいものになっていた。  説明抜きで共通の話題として、起こった出来事や話を聞けて、同じ位置で笑い合える。  大介はそんなに深い考えなく、「知ってほしい」の一心で渡してくれているんだろうけど。  楽しみにさえなりつつあった渡される紙。  だけど、昨日渡された紙は、重かった。  昨日貰いはしたけれど、目を通すと心がまた焦燥感でどうにかなりそうで、家では見られなかった。  朝早いと聞いていたが、暗い間に出発したと知ったのは、プリントに目を通した今だ。  何処に行っているかも知らなかった。見ても直弥は行った事のない、知らない遠い土地だ。   また昼を食べず、ぼんやりしていると携帯が鳴った。  大介からのメールだ。短い一文と、添付された画像が有った。 「……」  直弥は暫く画面を眺めた後、ゆっくり携帯を閉じた。  

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