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2月14日土曜日
* * *
「あー楽しかったな!」
ホテルに帰って風呂上り、ご飯でパワーをチャージしたのか、大介達は大はしゃぎしている。
榮は階段を上るのも精いっぱいだ。
けれど、一日大介の姿が見て取れて、それだけでも頑張った甲斐があったと心の中で頷く。
先生は運転から生徒指導と疲れ切っていたのか、生徒の部屋に早く寝ろと注意を告げた後、早々に自分の部屋に行ってしまった。
榮も巡らせたい思考回路とは反対に、布団に今にも崩れ落ちそうな位疲れと睡魔に襲われていた。普段身体も動かさない。
それ以上に、朝からずっと精神的緊張も襲って……自分が言った言葉で、首を絞める羽目になっていた。
(夜、大ちゃんに話を、する……)
あの謎の名刺の男性、電話の一件から、行動をはっきり起こそうと思いたった。
夏から思い続けていたけれど、揺れ動いていた。
今まで勇気もきっかけも無かった
今回あの日、部室でお礼のやりとりの流れがきっかけだけれど、自分が決めたこの合宿で、大介に告白しようと決めた。
だけど、やっぱり来る当日さえ勇気が出なかった。何をどう、伝えるかもまとまっていない。
告白しようと意気込んだのは、大介の変わった様子を目の当たりにした時だった。でも今、普通に変わらない大介に接していると、あんなに意気込んでいた勇気と勢いが鳴りを潜めて心から出てこない。
(どうしよう、なんて言うんだ……)
朝、大介に告げたものの、自分の答えも決まっていない。
言った後、どうなるのかも考えていない。怖いから考えられないのかもしれない。
肉体的にも精神的にも緊張して疲弊して……何も頭は回らなかった。
「なあ、榮」
ぼんやりとしていた榮に、大介は声をかけてきた。
「大ちゃん……」
頭の中が一杯の主役がいきなり目の前に現れて、榮は驚き少し目が覚めた。
「お前、夜に話あるって言ってたけど」
「あぁ……うん……」
「疲れた寝そうな顔してるな。大丈夫か? 今日、がんばってたもんな!」
大きな手で肩をはたかれた。痛いのに、顔が綻ぶ。
「話……どうしよ……」
(こんな、皆が居る所で出来ない。どこに行けば……動くのか? 何をどう話せば……)
「あ、明日の朝、朝にする」
榮は答えを出した。大介とは明日の夜までずっと一緒にいる。チャンスも時間もある。
(明日なら、僕だってもっと、ちゃんと……)
「明日か。解った。ゆっくり休めよ!」
大介は顔を覗き込んで笑顔を見せ、まだ臥せってはいない榮に布団をかけ、ポンポン叩いて去って行った。
大介の癖のある笑い声と、布団越しに触れられた心地よさと共に榮は横たわった。
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