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2月14日土曜日
「アンタ……なんで……」
意味が解らない。
(俺は、もう寝てんのか? 夢なのか?)
「ダイスケ!!」
直弥は聞いたことのない大声で大介の名を呼び、立ち尽くしている大介に飛んで抱きついた。
「ナオヤさん……なんで?」
大介の胸の中に飛び込んできた直弥は、当たり前だけれど凍えきっている。
雪山にスーツにコートを羽織っただけの格好なんて、大介は見たこと無い。
直弥がここにいるこの現実を、大介は理解できない。
「メール……に書いてくれてたから……」
「メール?」
「”楽しいけど、俺とやっぱり過ごしたかった”って……それ見た瞬間もう、いてもたってもいられなくなって。だから、俺が一度くらい、自分から行動しようって」
悴み固まった手でしがみつきながら、大介を仰ぎ見た直弥の顔は子供の様に笑っている。
「俺……俺……、今までダイスケに何もしてやれなくて。なのに、いっつもダイスケにはもらうばっかりで……どんどん甘えてるし。
今日だって……今日の事だって、ほんとはずっと覚えてて忘れてなんかなくて、ダメになって平気じゃなくて……今日までどんどん辛くなるし、もう俺はだめかもとか……気持ちぐちゃぐちゃで。
でも、来ようって決めてから、会いたくて、嬉しさだけが爆発して……それだけでよかったんだ。いい年して、こんな、簡単な事……今まで解ってなかった……ダイスケ、あ、あのな、」
棒立ちの大介に直弥は、息せき切ったまま話し続ける。
「正直、写真見て嫉妬もした。
今までずっと嫉妬してきた。なんで俺同じ年に生まれなかったんだろうって。俺だけ大人なんだろう、なんでこんな、上なんだろうって……
でも、大人だから会いに来れた! 今日会社の車で来ようと思ったんだけど、雪凄そうだからレンタカー借りて来たんだ。お前がくれた、プリントに書いてた場所とホテル調べて……
こんなこと……大人じゃないと出来ない。俺も高校生なら、会いたくても諦めてた。俺、今まで色んな事、ずっと諦めてきた。
でも、大介の事は諦めたくなかった。諦められない……大人でよかった!!初めて思った! 大人でよかったって!」
喋り続ける直弥を、大介はただ抱きしめる事しか出来なかった。正直心底驚いている。
こんなにも、とめどなく話す直弥を初めて見た。
こんな喋り方をするだなんて、想像もつかなかった。
いつも自分と話すときは一息間があって、特に最近は口数少なくて。
多分思いを飲み込んで噛み砕いて話してたんだろう。
そして、直弥の本心を聞いて、倒れそうなほど嬉しい。
「ナオヤさん……俺、」
いつもの直弥の様に、今は大介の方が言葉が出ない。
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