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2月20日金曜日

  *  *  *   _「直弥、大丈夫か?」   相手の声は、小さな声だけれどはっきり聞き取れた。   (? ナオヤ? なんで?) 「?? 誰っスか?」 _「そちらこそ、どなたですか?」  抑揚のない声で問いかけられた。 「……あ、」  直弥と言われて意味が解らなかったが、大介にも漸く今の状況がつかめた。 (携帯が入れ替わってる……俺のせいだ)    そして、なんとなく記憶の端にある相手。  声は覚えていないけど、卒のない感情の見えない話し方で思い出された。  大介の周りには一人もいないタイプ。大人の…… 「もしかして、あなた……ヨーヘイさんッスか?」 _「え? まさか君、もしかして」  相手の若干の声色が変わった。 「はい……」 _「君か」  電話口からため息が聞こえてきた。 _「直弥は? 何故君がこの電話に出るんだ? ちょっと直弥に代わって」  声を潜めているのか小さな声だけれど、呆れている様な酷く冷えた問いかけ。  ”直弥”と呼び捨てで言われる度に、大介は吐き気がした。 「……一緒じゃないから代われませんけど、ナオヤさんは風邪引いて……多分、寝てます」   _「『一緒じゃない』って、じゃあ何で君が電話でるんだ? そんな下手な嘘」 「嘘じゃない。携帯、間違えて……持って帰って」  予鈴がなった。  その音が遥平にも聞こえたのか、少し沈黙が流れた。 _「携帯間違えるなんて、その年でボケてるのか? そんな事有り得ないだろ」 「お揃いなんで。見た目が一緒だから……」  猜疑心の塊の詰問に追い詰められ、大介は真面目に間違えた言い訳を伝えた。 _「……へーえ」  一言言ったきりまた沈黙が流れたが、電話口の向こうから騒がしい声や音が聞こえる。 「それ、仕事の電話かかってくると思うから。早く返してやって」  プツンと切れた。  

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