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3月14日土曜日

「気持ちだけでありがとう。本当に良いよ、ダイスケ。俺何もダイスケに買ってあげられてなかったし。お返しも何も……」 「え !?何言ってんだよ、ナオヤさん。俺、一番欲しいもの貰ったって! だってあの日、ナオヤさん自分を俺に……」 「あ~! 、あ~!! お返し、で良い! ほ、欲しいものあった! あったから!」  直弥は大介の言葉の続きを絶叫でかき消した。  2月14日の事は己の所業だとは、重々承知しているけれど、言葉にされると破壊力がすさまじい。 (恥ずかしくて、死にそうだ)  面と向かって言われると、羞恥に耐えがたい。  大介の正直すぎる口を止められるのなら、さっさと何かを貰った方がましだと、咄嗟に口走った。 「なんだ、ナオヤさん欲しいものあるのか。最初からそういってくれりゃいいのに。俺、今日の為に実はバイトしたし! 言ってくれよ」 「あ、あぁ……えっと、」 (ダメだ、全く思い浮かばない……考えらんない)  直弥はしかめっ面を隠すために、両手で顔を覆いながら、必死で考える。 「そうだ。あ……、あれ」  直弥は紅潮していた顔を上げた。  今無駄に点いているテレビを見て思い出した。二人で見ていた時に流れていた商品。 「なあ、ダイスケ覚えてるかい? こないださ、テレビ見てて話盛り上がったやつ」 「なんだっけ?」  どうせなら、二人が気に入った物のほうがいい。一緒に使える物なら罪悪感も薄れるし、純粋に嬉しい。 「あの、ほら……人間を駄目にするとか言ってたやつ」 「ん? ……ナオヤさん、それ”人を駄目にする”じゃね? 『人間駄目にする』って、あぶねー何かになるだろ」  二人顔を見合わせて笑った。  笑いながら、同じ物が頭に浮かんでいた。 「あのソファ」  

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