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3月14日土曜日
* * *
「凄い人気なんだな」
「あぁ、テレビでやってたしな」
調べて、見に行った。けれど、売り切れて無かった。
「残念だけど」
「まー、見本みれたし。思ったよりデカかった」
「高かったしダイスケに悪かったから……うん。担いでもって帰るのも大変だし、まあ!」
「いや、どーせ俺も使おうと思ってたから、高いどうこうは……でもナオヤさん家、狭いから……まあ、な」
「こら、狭くて悪かったな。でも確かに足の踏み場なくったかもだし……ね」
行きの盛り上がったテンションは消え失せている。
二人で帰り道すがら、売り切れていて手に入らなくて良かった探しをしながら歩いた。
「他になんか、欲しいもんは?」
大介は心底残念そうだったけれど、直弥は内心ホッとしていた。
「いや、もう大丈夫。ありがとう、ダイスケ。帰ろう」
周りを窺い、大介の頭をワシャワシャ撫でてやったら、店を出てから漸く白い歯をこぼした。
家に着いて、帰り道買ったご飯をキッチンで用意していたら、リビングから直弥を呼ぶ声がした。
「ナオヤさん、飯までまだ早いし、用意後で良いから、来て」
「ん?」
声に急かされ、リビングに顔を出すと
「こっち来て、ナオヤさん」
いつもは、座椅子に自分が座って、大介は直弥の膝枕でゴロゴロ寝ている。
その自分が座っているペラペラの座椅子に、大介が腰掛けて、両手を広げていた。
「お返し買えなかった代わりに、俺、今日なるわ」
「何に?」
「ナオヤさんが、欲しかったソファ」
「!? い、良いって!」
「良いから」
繰り返すこと幾多。
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