153 / 255

3月14日土曜日

 *  *  * 「凄い人気なんだな」  「あぁ、テレビでやってたしな」  調べて、見に行った。けれど、売り切れて無かった。 「残念だけど」 「まー、見本みれたし。思ったよりデカかった」 「高かったしダイスケに悪かったから……うん。担いでもって帰るのも大変だし、まあ!」 「いや、どーせ俺も使おうと思ってたから、高いどうこうは……でもナオヤさん家、狭いから……まあ、な」 「こら、狭くて悪かったな。でも確かに足の踏み場なくったかもだし……ね」  行きの盛り上がったテンションは消え失せている。  二人で帰り道すがら、売り切れていて手に入らなくて良かった探しをしながら歩いた。 「他になんか、欲しいもんは?」  大介は心底残念そうだったけれど、直弥は内心ホッとしていた。 「いや、もう大丈夫。ありがとう、ダイスケ。帰ろう」  周りを窺い、大介の頭をワシャワシャ撫でてやったら、店を出てから漸く白い歯をこぼした。  家に着いて、帰り道買ったご飯をキッチンで用意していたら、リビングから直弥を呼ぶ声がした。 「ナオヤさん、飯までまだ早いし、用意後で良いから、来て」 「ん?」  声に急かされ、リビングに顔を出すと 「こっち来て、ナオヤさん」  いつもは、座椅子に自分が座って、大介は直弥の膝枕でゴロゴロ寝ている。  その自分が座っているペラペラの座椅子に、大介が腰掛けて、両手を広げていた。 「お返し買えなかった代わりに、俺、今日なるわ」 「何に?」 「ナオヤさんが、欲しかったソファ」 「!? い、良いって!」 「良いから」  繰り返すこと幾多。

ともだちにシェアしよう!