167 / 255
4月28日火曜日
ふと視線を下げると、さっき蝋燭を吹き消すのに苦労したケーキが有る。
「……」
「ん? どうしたんだ? ナオヤさん」
ケーキを凝視している直弥に気付き、大介が不思議そうに問いかけた。
「いや、あの……」
ケーキは大介が用意してくれた。凄く嬉しい。心から。でも。
「あのさ、ろうそく……」
「大丈夫! 心配すんなって! 数間違えてないから! ちゃんと何度も数えて立てたし!」
大介は得意げに、天真爛漫な笑顔で直弥に返事した。
「うん」
確かに間違っちゃいないだろうこの数。
二人用の小さなケーキに、夥しい数の蝋燭が立てられている。火を点けるのにも一苦労していた。
大介はイソイソと嬉しそうに、準備を全てしてくれていたから、直弥は口を挟まなかった。
ケーキ一面にご丁寧に立てられた二十七本の蝋燭。
全て火が灯されたときは、煌々と燃え盛っていた。
火災報知器が鳴る前になんとか吹き消せた蝋燭を、ケーキから二人で抜く。
抜き終えたケーキは、マシンガンの様に穴だらけだ。
「あの、大介さ、家で誕生日ケーキ食べる時、ロウソク十歳で大きな一本とかにしないのかい?」
直弥は思い切って聞いてみた。
来年一緒に迎えることが出来るのなら、これに一本更に増えると思うと、一抹の不安がよぎったから。
それに、立ってたロウソクの大きな炎になるほどの数や、ケーキにあいた穴の数を見て
年の差を思い知らされ、直弥は無意識に落ち込んでいた。
そんな自分の感情に気付き、こんなに祝ってくれている大介の前で悲観的になっている自分に、また自己嫌悪する。
「ん? ケーキ? 誕生日になかったからな……
ローソク、そうするのか! 知らなかった! 道理で……店員何か言いかけてたけど『絶対二十七本くれ!』って言ったら変な顔してたな!」
大介は癖のある笑い声を響かせた。
「そうか。大介男の子だし、ケーキで祝うことなんてなくても不思議じゃないか」
「兄貴歳離れてるから、俺が小さい頃もう家出てたし、俺甘いもん苦手だから、かあちゃん用意しねーし」
「……え?」
ともだちにシェアしよう!