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4月29日火曜日
「ナオヤさん」
大介の声を殺した呼び掛けも、聞こえないふりをして背を向けたまま両手で顔を覆った。
「ナオヤさん、」
「……」
「なあ、ナオヤさんって」
放っておいて欲しいのに、大介は見過ごしてはくれない。
次第に近づく声に直弥はびくついていると、暗闇の中でも、布団を一気に剥ぎ取られた事がわかった。
代わりに布団とは違う重量感と温度を身体に感じる。
直弥の心臓が跳ね上がった。
覆い被さって来た大介の手によって、直弥自身の顔を隠している手をゆっくり解かれる。
「ナオヤさん、逃げないで」
羞恥に歪んでいる顔を見られているかと思うと耐えきれず、直弥はぎゅっと目を閉じた。
「ナオヤさん寝言で名前、呼んでくれたから。俺の夢見てくれてたのか?」
耳元で囁かれて、先ほどの醜態をまた思い出し、大介に羽交い締めにされていなければ逃げ出したい。
「お、俺……ダイスケ……」
「何の、どんな夢見てたの?」
「夢、どんな……」
(そうだ。確かに見てた。でも)
「言えない……」
大介は口を噤んだ直弥の髪を掻きあげ、額に頬にキスをする。
「言ってくれよ、ナオヤさん。夕べ、ナオヤさんが言ってだろ。『言って貰わないと判らない』って。俺もだよ」
大介の手が直弥の下半身に伸びる。触れられたそこは熱を帯びていて。
(バレてる……)
寝ながら自ら腰を大介に擦り付けていたかと思うと、もう自尊心も粉々で……観念した。
「俺、ダイスケと……お前としてる夢、見てた」
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