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6月4日木曜日 深夜

 ノートパソコンを、再び開く。  全身全霊大介に向いていて、すがり付く榮の姿。 「もしかして……この姿が、いつもの風景だったのか?」  この二ヶ月観察してきた遠野と、泣いていた前日の写真の中にいる、遠野の様子は違っていた。  クラスが違うので大介との絡みは部活でしか見ることは無かったけれど、今日のように、大介がちょっかいをかけ、遠野は迷惑そうに振り払っていた。  誰もが認める仲の良さなので、本気で嫌がっているわけじゃないというのは思っていたが、遠野から大介に絡んでいる姿は観察を始めて見る事はなかった。  写真のように大介に縋っている遠野の姿も、杉崎は見ていない……  だけど記憶を呼び起こせば、昔は笑顔で大介に向かっている遠野の姿もぼんやりと思い出す。  鈍感で、人の感情を読みとる事も得意じゃない。  だけど、時系列に並べて理論立てて状況把握する事は得意だ。  歴史オタクが高じて日本史の教師になった。  杉崎は、レポート用紙を引っ張りだし、罫線を引く。 (夜中に何やってるんだ俺は) 自嘲しながらも、気になってペンが止まらない。  杉崎は年表日本史ならぬ、遠野史を書き始めた。  一年の時は担任じゃなかったから、初めて会ったのは同好会だった。  今まで考えたことも無かったが、そもそも何故運動が苦手で興味のかけらもないこの同好会に入ってきたのか……杉崎は記憶を呼び起こす。  ”先生、5人になったら同好会出来るんだよな! こいつ、入ってくれるって! ” 部室与えられていなかった頃、空き教室にやってきた。  大介に肩を抱かれてうつむき加減で入ってきた遠野。  最後の人数合わせで連れてこられた。大介に。  杉崎は仲が良い友達だからだと思った。  今考えると、友達だからと言う理由で入るには利益がなさすぎる謎の同好会。  他に文化部ならいくらでも入るところがあっただろう。  それから、甲斐甲斐しく雑用をしてくれていた。  他の部員も仲良くなり、歓迎していたが、やはり殊更大介とは仲が良かった。  うっすらとした記憶が蘇る。  いつも大介の後ろにくっついてた印象だ。  ニ年になり、担任になった。  部活もクラスも一緒で、グループにいても単体でいても二人はいつ見ても一緒にいた印象だ。  性格も何もかも正反対の二人だけれど、仲が良かった。  そして  ニ学期のはじめ、遠野が泣いている所に出くわした。  放課後、独り、机につっぷしていた。

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