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8月13日木曜日 2年目
今までの人生、紹介されたり告白されたりして、何人か付き合ってきたけれど……続かなかった。
杉崎は本棚にぎっしり並べられてある、歴史書物を眺めた。小さい頃から好きな世界に入り込んでいれば幸せだった。
どうしてこのままでは居られないんだろう?
そういう本性をだせば大概の相手は、引く。
多分上手く趣味を利用出来る人も居るだろうけれど、完全に自分は逆側の性格で。
今まで杉崎の本性を見て引かずにいてくれたのは、親友である大介の兄、と後一人……位。
恋愛に関して、怖かったからか本気になった事もあまり無い。
全てを省みず全力で本気になったのは、後にも先にも一度だけ。その終わりはトラウマレベルで。
教師になれて心底良かったと思う。
世渡り上手でない自分が、得意分野で嘘のようにコミュニケーションが取れる。
不器用でも誠心誠意接していれば、子供たちは受け入れてくれる。
言い換えれば、世界を変えて恋愛から逃げて……現在に至る。
(俺の釣書は、こんなもんだ)
綺麗で優しそうな写真の女性を遠目で見ながら、杉崎は自己分析を冷静にしていた。
相手に見せられない、自分のプロフィール。
(何時帰ろうかな)
小さい頃から見慣れた天井を見上げて、自分にとっての今は聖域、学校の事をぼんやり思い出す。
天井に浮かび上がったのは、一学期見続けてきた、生徒の姿。
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