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8月19日水曜日 2年目
「それにしても、おめでとう。お前も、とうとう年貢の納め時だな」
蒼大は昔からモテていた。自分とは違い、選びきれずに今まで来たんじゃないかと杉崎は予想していた。
「“年貢の納め時”って、相変わらずな言葉使うなあ! やっぱり義輝、面白い。久々聞いたよそのフレーズ。流石、日本史教師」
蒼大が、杉崎の発した内容以前に、言葉を聞いて爆笑し始めた。
心外な杉崎はいささかムッとしたが、バカ笑いしている表情は大介に似ているなと、ビールを口にしながらぼんやり思う。
「どんな娘なんだよ」
「あぁそうか。お前、会った事無かったな」
本日本来のお題に戻り、杉崎は一頻り話を聞いた。
友人とは言え、お互い別々の仕事をしていて特に友人の中でも昔から彼女が変わるサイクルが早い蒼大の結婚相手の事は、余りよく知らなかった。
「そういえば、盆に日帰りだけど彼女連れて実家帰った。義輝のおばさんにも道で会ったよ」
「……だからか」
「なんだよ?」
「お前のせいで、今年の夏は俺への小言が倍増してた」
二人で笑い合う。
「大介、最近元気か?」
突然見当外れの質問をされ、杉崎は首を捻った。
「え? 弟の事、俺に聞くなよ。こないだ会ったんだろ?」
「いや、会えなかったんだ。あんまり帰らない俺も悪いんだけど……たまに帰っても、あいつほとんど家にいなくて」
「大介は友達も多いし、バイトもしてるしいつも忙しそうだもんな」
記憶の端にある、大介の行動パターンを杉崎は呼び起こす。
「それは俺も前から知ってるけどさ。アイツ今年は受験生だろ。もうバイトもしてないだろ?
ていうか、突然大学行くって言い出したのを親に聞いて、それも驚いた」
「あーそれは俺も驚いた。でも頑張ってるよ。勉強」
「あの子、今学校でどんな感じなんだ?」
「”あの子”って……歳じゃないだろ」
「一回り下なんだ、俺にとっちゃ大介はいつまでも”あの子”だよ」
確かに大介の見た目はすっかり大人の容貌だけれど、言動、行動は相変わらず子供っぽい。
この間 蒼大には黙っておいてやろうと思った、大介達の中学生バリの騒ぎようを思い出し、また胸にしまった。
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