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8月19日水曜日 2年目
「付き合ってる子とか……居るのかな?」
「大介のそんな事、あんまり詮索してやるなよ。バレたりするの、嫌な年頃だろ」
”詮索してやるな”
蒼大に今言った杉崎本人が、自分の言葉に堪えた。
ふと遠野の顔が脳裏に浮かぶ。
大介の兄である蒼大より、詮索する権利のない杉崎が、遠野の一件から、無意識に思ってしまったりしている。
遠野は大介の事が好きだ……ろう。
大介は? 誰か好きな子は居るのだろうか。
正直気になっていた。
アラサーの教師が、高校生の恋愛事情に内心バリバリ首を突っ込んでいる。今まで気になったことも無かったのに。
兄である蒼大に、逆に聞いてみたかった事かもしれない。
それこそ、”何でお前が詮索するんだ”という話だが……
学校内では見る限り一ミリもない。
中身は子供の大介の姿しか浮かばない。
「担任も外れたし良く解らないけど……俺が見てる限りは、そんな様子もないけどな。大介自体の様子は、昔から今も変わらないな」
「そうか。有り難う。俺がこんな事、聞いたのは大介には内緒で」
「こっちこそ、学校の様子言った事、言わないでくれよ。先生として信用してなくなる」
バツ悪い二人の笑い声が、アルコールに押され沸きだした。
目の前の蒼大と、昼に会った大介の姿をダブらせる。
体格、スタイルは似ているけれど、大介の方が現代っ子(死語)だからか良いと思う。顔も似ていると言えば、似ている。
だけど、表情、仕草、たち振る舞いがまるで違う。
大人と子供だ。
実際、そうだけれど……言葉以上に大人と子供だと感じる。
それは蒼大が今の大介の歳と同じ頃から知っている杉崎だからこそ、断言できる。
蒼大は高校生の時から落ち着いていて、クールで理知的で、卒がなく大人だった。
外見はともかく中身がまるで違う。
だからか杉崎が、大介を毎日見ていても蒼大の面影を追う事は無かった。
大介も黙って大人しくしていれば、人も羨むイケてる種族なんだろう。
だけど本人の様子と杉崎にもある、小さい頃から知っている あの子フィルター のせいで、今まで蒼大に感じていた、モテる空気を感じた事も無かった。
(性格でこんなに印象が変わってくるんだな)
杉崎は興味深く岩瀬兄弟を脳内で重ね合わせた。
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