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8月30日日曜日 2年目
* * *
目覚めた時、状況が全く判らなかった。
見上げると、リビングの天井で。
大介は知らずに寝てしまっていたらしい事も、暫く理解できずに混乱した。
昨日一睡もしてないからか、今日の出来事の記憶が曖昧で。何処までが夢で、何処までが現実か大介には判断つき兼ねた。
思い出したくない恐ろしい事だけど……脳が停止している間、理性もストップしていた気がする。
直弥が受け入れてくれるがまま、一度押し倒し。
目を離したくないから、浴室に連れ込んだのは、多分、現実。
直弥に誘われるまま、二度目……
(二度目のあれは、夢?)
そこで、夢か現かの記憶は途切れている。
身を起こすと下着は半分脱いだままで、バスタオルがかけられていた。
(夢じゃなかった……全て現実……)
大介は自己嫌悪に押しつぶされそうになりながら、バスタオルを握りしめ、うなだれた。
けれど、瞬時に辺りを見回す。
「ナオヤさん?」
昨日来てから、一度も目を離さなかった姿がない。
焦燥感が襲い動揺する。
同じリビングには居ず、浴室、トイレ……何処にも居ない。
寝室は静まり返っていて、キッチンにも姿は無かった。
(出て行ったのか?!)
心臓の鼓動が早鐘の様に打ち、息を吐くのも忘れ大介は直弥の姿を捜す。
「あ、」
(居た……)
人の気配に気づき、振り向いたのは直弥の方だった。
夕日の逆光に照らされ、美しすぎる姿が煙と共に溶けてしまいそうだと大介は本気で思う。
「ダイスケ、起きたかい?」
「あの、俺……」
「昼ご飯、食べそびれたから、夜たくさん食おうな」
一ふかしした後、直弥は口許から煙草をゆっくり外し、何事も無かったかのように、笑顔で話しかけてくれる。
大介は返事が出来ず、その場でしゃがみ込んだ。
(煙草……落ち込んでるか苛立ってる証拠だ……俺の所為だ……)
大介の目の前で吸う姿を、直弥は極力見せなかったけれど、ダイニングテーブルにいつもおかれている煙草の存在は、付き合った当初から気付いていた。
口に出して言ったことは無いが、直弥が煙草を吸っている時は、いつも浮かない表情で。
美味しいから、吸いたいから吸っているとは思えなかった。
煙と共に何かを吐き出している様子で。
今、思い出したくなかった、遥平との一件を思い出してしまった。
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