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8月30日日曜日 2年目

――三月  雪の様な雨が降っていた、偶然遭遇してしまったあの日。  直弥とのお揃いの銘柄の煙草を見せつけられた時、大介はいつに無く苛立った。  二人で一緒にいつも吸っていたんだろうか?  どっちがお揃いにしようとしだしたのか?  直弥はまだ、同じパッケージの煙草を吸っている。  パッケージを見る度、コイツの事を思い出したりするんだろうか?  大介は基本、直弥の趣味嗜好に口を出す事はしない。  煙草も直弥が吸いたければ吸えば良いと思う。  だけど…… (同じ煙草は吸って欲しくねー! 二度と)  直弥の家に帰って止めさせる様、胸に誓った。   遥平とサシで話し、精神的に疲れたけれど、会った事は言うことが出来ない。  直弥の家に向かう途中、ふらりとコンビニに入った。  レジのカウンターの上に、ずらりと並んだ煙草。 「こんなにあるのか……」 (偶然じゃ、ないな)  知らなかった大介は種類の多さに驚いた。  同時に、見せつけてきた遥平の行動も、お揃いだという事も、妄想ではなく事実だと思い知る。  学制服を着て、煙草を食い入る様に眺めている姿を、店員に訝しげに見られながら違うなら何でも良いと 二人と違う番号を、レジで告げた。 「未成年には売れません」 自分の身分を忘れ去っていた大介は驚いて、店員に謝り店を飛び出した。 「あーーーー!!!!」  大介は直弥の家に向かい、走りながら声を上げた。 (家に着いたら今置いてる煙草を速攻捨てて、直弥さんが帰ってくるまでに、ただ違う煙草に換えておきたかっただけなのに) 「俺は……それさえも出来ない!」 (まだ煙草一つ買えやしない俺が、あの二人に立ち入る事が出来るのか?!)  自分のガキさがもどかしい。同じラインに立ててもいない。  遥平に男としてだけでなく、直弥と同じ大人としても、猛烈に嫉妬した。  息を乱して直弥の家に着いた途端、換えの物も手に入らなかった癖に、やっぱり嫉妬でテーブルの上にあるお揃いの煙草を投げ捨てた。  帰って来た直弥に、煙草を吸っても良いけど変えてと告げた。  身体の心配をしていると、良い様に誤解してくれた直弥は 「有り難う。軽いのにするよ。いつかやめるから」  と笑ってくれた。  大介はその笑顔と礼の言葉が、罪悪感で直視できなかった。

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