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8月30日日曜日 2年目
見上げると、直弥が側に来て笑顔で立っていた。
「どうした? ダイスケ、腹減って動けないかい?」
直弥も膝をついて座り、大介の目線に降りてくる。
「何、食べたい?」
「今日は、帰る……」
大介はさらに臥せって頭を下げた。
「どうした?」
「ガキで、ごめん」
大介から言葉がこぼれ落ちた途端、直弥に胸倉を掴まれた。
「ダイスケ!!」
驚いて顔を上げると、見た事の無い形相で直弥に怒鳴られた。
付き合ってから昨日まで、今日一日だって、何をしても何を言っても、大介は怒られた事が無かった。
見た事ない顔なのは、怒られたのが初めてだからだ。
大介の全身から、血の気が失せた。
「お前は、ガキだよ! 18の!」
ガキだと念を押され大介が視線を逸らすと、身体を揺すられ、条件反射で直弥と目を合わせるしかない。
直弥の綺麗な顔が怒ると余計冷徹に感じられ、大介は怯えた。
「ガキの、何が悪い」
「……」
「ガキで、何で謝るんだい?」
「それは……俺が、ガキでバカだから……
今日だって、ナオヤさんに一杯迷惑かけてめちゃくちゃして……」
直弥の嫌がる事はしない。
自分の中で一生守り抜く約束事だったのに、ずっと守ってきたのに、今日禁忌を破ってしまった気がする。
「今日? ダイスケは何一つ悪く無い。今日あった事、俺は何一つ嫌じゃなかったよ」
「なあ?!」と言葉とシンクロして直弥に身体を揺すられ、大介の胸の奥まで震える。
「俺の為なんかに、物分かり良くなって、我慢して、無理して」
直弥は掴んでいた大介の胸に顔を埋めた。
「急いで大人になんか、なるなよ……」
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