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9月20日日曜日 2年目
「はい。さっきまで榮と俺等一緒だったんですけど」
「そーそー、昼から色々見て回ってて」
「岩っちがここ一人で当番してる時間に、どーせ客いないだろうからおちょくりにと思って、皆でココ覗いたら……」
「一人だけ、校外のお客さんが居て」
「なんか、知り合いの人みたいで、岩っちと喋ってて」
「邪魔しちゃ悪いから、俺達は窓からのぞいただけでまた校内回ったんですけど」
「そうそう、その時まで榮一緒だったけど、交代に戻ってくる前に『用事思い出した』って、どっかいっちゃいました」
「遠野はそうか。岩瀬は友達多いから、校外の友達でも連れてきてたのかな?」
遠野はもうすぐ帰ってくると聞いて杉崎は安心した。
大介も知り合いに三年間頑張った部活の展示でも見せたかったのか。
杉崎は文化部と間違えられて笑ったけれど、部員の皆が友人知人にクロカン活動披露出来て、良かったと思った。
「いや、岩っちの”友達”っていうか……」
「窓越しだったからあんま良く見えなかったけど、大人の人だった」
「岩っちの知り合いの人、当番交代する時もう居なかったけど、年の離れた兄貴がいるって前に言ってたの思い出して。
あれ岩っちの兄さんじゃね? って、皆で言ってたんです」
(蒼大が来てるのか?!)
杉崎は話を聞いて驚いたが、大介の兄と友人関係であることは内緒だから、平静を装う。
『あの子に会えない』と嘆いていた蒼大の姿を思い出し、大介に文化祭へ招かれて良かったなと、杉崎はまた安心した。
「じゃあ先生、施錠に最後来るから、片づけ終わって最後皆揃ったら帰ってもいいぞ。今日は皆よくやったな」
杉崎は、笑顔で皆をねぎらった。
校舎から離れた部室棟を後にし、一般客と制服が入り乱れた校庭を歩いていた杉崎は、かなり先の校門近くで見知った後ろ姿を見つけた。
(あ、大介だ)
当番交代した時には、蒼大の姿は無かったと大成達が言っていたから
てっきり大介と遠野が落ち合って二人で文化祭を見て回っているのかと、杉崎は勝手に思い込んでいた。
生徒の行く先を無意識に想像しているイタさは、重々自覚している。
(あれ? 制服じゃない……)
そんなイタい想像は外れ、大介は遠野と一緒ではなかった。
(蒼大?!)
一般人もたくさんいる文化祭だ。
今岩瀬兄弟に声を掛けても、誰も目に留めず、怪しみもしないだろう。
少し遠いけれど、校門まで足を速める。
だけど、半ばで足が止まった。
(蒼大、じゃない……)
いくら遠目とはいえ、親友の姿を見間違える筈は無い。
大介は兄ではない、杉崎の見知らぬ男と一緒だった。
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