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9月20日日曜日 2年目

   杉崎は歩を進められず、立ち止まったまま大介の様子を見つめていた。  大介の陰になって、相手の姿ははっきりとは見えないけれど、100%蒼大ではないと言い切れる。  そして、後ろ姿から時折覗く大介の顔は……今まで知っている少年ではない、表情で。  人の機微を読み取るのが苦手な杉崎なのに、一種独特な空気を二人に感じ、やはり足は進まなかった。  ”大きなお友達”  蒼大から飲み屋で聞いたワードが、不意に思い出される。  交友関係が広いだろう大介の事だ。  バイト先や知り合いで、年が離れた友人が居たって不思議じゃない。  何処の誰でどんな関係なのか?   杉崎が今、駆け寄れば、心配していた蒼大の疑問が明かされるかもしれない。  気軽に、何食わぬ顔で話しかければ済む。  だけど……  杉崎は、大介から視線を外し、校門から踵を返し、校舎へ向かった。 (蒼大、すまん!)  杉崎は心で友人に詫びながら、足を速めた。大介の事を確かめている余裕が心に無い。  気が急いて、衝動が抑えられない。  いつも凡庸とした感情なのに、こんな事は滅多にない。   人の波を掻き分け、少しずつ足早になり 校舎に入った頃には、杉崎は走り始めていた。  いつも廊下を走る生徒を注意しているのに、足は止まらない。  一般客で混み合う廊下を、すり抜けながら探す。 (何処だ?! どこにいる?!)  廊下を行き交う人々を当たり構わず見まわすけれど、姿は無い。  誰より見つける自信があるほど、その姿を見続けてきた。見逃す筈がない。  デリカシーに欠けてるし、勘は鈍い。  だけど、何故だか今は予感がして堪らない。 (きっと……何処かで、一人で泣いている)

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