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9月20日日曜日 2年目
「遠野!!」
探しあぐね辿り着いた先は、催し物をしていない、静まり返った三年の教室階。
最上階まで駆け上がった杉崎は運動不足のせいか、息が上がっていた。
けれど逸る心を抑えきれず自分のクラスまで走り、覗いた教室内に……遠野は一人で、居た。
窓際の一番前の机に凭れ掛かり、窓の外を眺めている様だ。
その頬は、濡れている。
杉崎は、弾む息を飲み込み深呼吸し、引き戸を開けた。
「……遠野、」
「?!」
突然現れた杉崎の姿に、遠野は声が出ない代わりに、全身びくつかせて驚いている。
「あ、」
(なんて言えば良い?)
杉崎は歩み寄りなら、脳内で言葉を探せないでいた。
泣いている相手に対して、気の利いた言葉一つ浮かばない。
今までの様に、空気の読めない 大人の正論 を押し付け、また傷つけるのも怖い。
それ以前に、正直本当の事情は分からないから、何を言って良いのか、悪いのかが
(解らない……)
解らないけれど、事実、遠野は目の前で泣いている。
杉崎は、何も言わない事に決めた。
「……せんせい、なんで、また……」
遠野の傍まで辿り着き、気付いた。
窓の外、遠野の視線の先には、大介ともう一人の姿。
(見なくて良い。泣いて逃げ込んだ先でまで、もう、見なくて良い)
杉崎は黙ったまま、背後から遠野の顔に腕を回し、目隠ししてやった。
もう片腕の行き先を、迷いながらも頭を撫でると
堰が切れたように、目の前を覆われた杉崎の腕にしがみつき、遠野は声を上げて泣き出した。
一度目、二度目は、ただの偶然だった。
三度目は、完全に自分の意志で、必然的に。
(俺は遠野の元へ、来た)
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