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9月20日日曜日 2年目

 自分の名前を知ってくれていた事に驚きで、問いかけた遠野の答えは、杉崎と同じ将軍の名前を知っている理由が返って来て。  まったく話は噛みあってないけれど、杉崎は喜びが込み上げ嬉しさを抑えきれず、テンション高く話し始めた。 「――で、今でも一番好きで、尊敬してる人なんだ! 皆に一人でもそんな糸口でも歴史を好きになって貰えたら、って」  杉崎はハッと我に返り、赤面する。  気が付いたら、歴史オタクの地が出て、本当にどうでも良い話を一人喋り続けてしまった。 「遠野、ごめん、先生一人で何喋って」 「先生……キモい」  遠野から辛辣な一言が聞こえたと同時に、腕から振動が伝わる。小さく体を震わせてる。 (泣いていた遠野が、笑ってくれた) 「先生……」 「な、なんだ?」 「今度……本、貸して下さい」  泣き止み、笑ってくれて、振り向いた時漸く見られた遠野は、やはり泣き腫らした顔をしていた。  部の仲間や、大介にも見られたくないだろうと思い『部活の皆には遠野は家の用事があると言っておくから』と諭し、教室からそのまま帰してやった。  皆の元に戻ってきていた大介と部員と共に、遠野の代わりに杉崎は部の展示物の片付けを手伝った。

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