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9月20日日曜日 大介 2年目
* * *
「ッーース!」
「お帰り、お疲れ様だったね」
「昼に会ったのに、また夜に会うって変な感じだな!」
「一日大変だったんだし、家に帰ってゆっくりしても」
「そんな事出来る訳ないだろ! 今日の事……話したいこと山ほどあるし、ちょっとしか会えなかったから会い足りねーし!」
大介はリビングまで叫びながら走り、鞄を斜め掛けしたまま直弥を背中から抱きしめた。
「なあ! ホントに、ホントに……ホンットに!」
「ん? なんだい?」
「来てくれて、嬉しかった」
耳元で囁かれ、直弥の右耳は赤く染まった。
「嫌がってたのに、来てくれてありがとう、ナオヤ」
大介の誘いを嫌がってた訳じゃない。
ただ、全てが煌めいている高校という聖域に、今の自分が足を踏み入れるのは、正直勇気が要った。
大介の暮らしている世界は、そりゃあ見たかった。
けれど、見るのが怖くもあった。
間違った言葉だけれど敢えて使えば、身分違い の現実を、目の当たりにし思い知らされそうで。
(でも、勇気を出したおかげでこんなに喜んでくれてる)
「ナオヤさん、どした?」
直弥は思い巡らせていただけだけど、抱きついている大介に、息遣いだけでも感情の変化を読み取られる。
「……いや、何でもない。俺も、行って良かったよ」
直弥は身体を反転させ、学校で見た時とは全く印象の違う大介の制服に顔を埋めた。
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