9 / 64
イライラ-1
「……といわけ」
昨日の夜。
何があったか先輩が教えてくれたんだけど。
「本当ですか?」
「腰痛くて怠いだろう?それが証拠じゃん。……嫌だったか?」
嫌なわけない。
だってぼくは先輩が好きなんだから。
でも、先輩は?
「嫌じゃないです」
ぼくがそう言うと先輩は微笑んでいた。
「このあとどうする?どっか遊びに行くか?」
「…先輩。あの…」
「ん?」
「帰って休みたいです」
「そうだよな。じゃあまた明日な!あ、また飯食いに行こうな?」
「はい。また明日」
まるで逃げるかのように家に帰った。
「ただいまー」
誰もいないマンションへや。
親もとうの昔に死んでいない。
親戚の人たちはぼくを嫌っている。
ぼくを育ててくれたおばさん一家は本当の子供のように接してくれた。
先輩はぼくを抱くことに抵抗なかったのかな。
先輩はノンケなはずだし。
『男が男を好きって気持ち悪いんだよ!!』
わかっているさ。
男相手にしか恋愛感情を抱けないって。
気持ち悪いに決まっている。
というか。
マジで腰が怠い。
「とりあえず寝とこう」
その日、ぼくはそのまま眠りについた。
***************
なんだが体が熱い。
フラフラするし。
「熱でも出たかな?」
体温計どこだっけ。
pipipi
「38.2……どうりで怠いはずだし」
熱なんかで休みたくないけど、怠いし動けないしで。
休むことにした。
「企画部の矢嶋です。今日具合悪
くて動けないので休みますって伝えてもらっていいですか?」
あー。
本格的に気持ち悪くなってきた。
何も食ってないからか?
何かあったっけ?
「ん……」
『あ、起きたか?』
誰?
「……先輩?」
「ん?目覚めた?」
「なんで?」
「お前が具合い悪くて休むつーから心配できたんじゃん!」
まだ仕事中じゃ!?
それよりも先輩どうやって部屋の中に入ったんだろう?
「先輩、仕事は?」
「今は夜の7時だよ!」
「今日は確かクライアントの方と食事が」
「あぁ。千石さんが変わってくれたから」
「すみません」
「気にすんなよ!体調不良の原因は俺にもあるしな」
「先輩のせいじゃ!」
「いいから。飯食ったか?」
「いえまだです」
「言い方かえる。今日何か食ったか?」
先輩怒るかな?
「めまいがして何も」
「ちょっと待ってろ」
そう言って先輩はキッチンへ向かった。
ともだちにシェアしよう!