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千石と辻元-4
「へ?」
「だから、矢嶋と付き合うことになったから」
次の日。
先輩にそう報告した。
先輩はびっくりしていた。
当然だと思う。
自分のしかも昨日まで普通に仕事していた先輩と後輩が付き合うことになったとか言われたら。
『とりあえず辻元に報告して、様子見てみるか?』
千石さんはそう言った。
「冗談ですよね?」
「本気だよ。俺は矢嶋を本気で愛している」
ドキンッ。
え?
なんでときめいてるんだ?
「お前、まだ信じてないな?仕方ないな証拠見せてやるよ」
千石さんはぼくにだけ聞こえる声で。
『すまない』
そう言って抱き寄せてきた。
「千石さん?」
千石さんの顔が段々と近づいてきた。
そして。
唇が重なった。
!?
キスされてる?
「ん、千石さっ」
そんな。
先輩の前でキスとかっ。
さっきのすまないってそういう意味だったんだ。
先輩以外は嫌なのに千石さんのキスは気持ち良くて……。
下半身にだんだんと熱が集まりはじめた。
「はぁ」
「こういうわけだから。お前には報告しとくな」
「……じゃあ千石さんと矢嶋組んだ方が…」
「俺は今、無能な新人しごき中だからできないんだよな」
大げさにため息を千石さんは吐いた。
「じゃあ今から飯行くか?」
「え?」
「時間的には丁度いいですし。あ、矢嶋。このあとクライアントが一時に来るらしいから」
「わかりました」
千石さんは先輩が見えなくなると……。
「んっ千石さんっ」
「お前、マジ可愛すぎ」
またキスしてきた。
「!?ちょっどこ触って!」
「さっきからここ感じてただろう?」
千石さんは優しく包み込むようにスラックスの上からそっと触れてきた。
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