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湊の過去-7
目を覚ますと知らない所にいた。
「どこ?」
「あ、湊。起きた?」
「水嶋くん?」
「佑樹が湊が保健室で寝てるつーから」
蓮川くんには迷惑かけたな。
「なぁ、湊って親いないの?」
「いないよ。ぼくの父さんと母さんは幼稚園の時に死んじゃったから」
「今は親戚の家にいんの?」
「一人だよ」
「え?」
「おじさんもおばさんもいい人たちだよ。ただ、ぼくがおばさんたちに悪い気がして……だから、一人で暮らしてる。父さんたちの遺産で」
父さんたちは会社を経営してて。
ぼくのために貯金していたんだって。
もし、何かあった時のために。
「バイトしたくてもぼく不器用だからできそうにないし」
ぼくもバイトしてみたい。
でも、バイトして、勉強しては体力的に無理だと思うから。
「俺頼りない?」
「え?」
「俺、湊が大切だよ?具合悪い時は言って欲しいんだ」
「水嶋くん……」
「だって、俺は……湊の彼氏だろう?」
そういう水嶋くんの顔がかすかに赤かった。
「ごめんね。心配かけて……」
「熱あるみたいだし、寝てろよ。うちの親には湊の親いないらしいって言ってしばらく泊めることにしたから」
「明日病院に父さんと連れて行くから」
ぼくはいつの間にか眠りについていた。
そして。
いつものように夢をみた。
父さんと母さんの。
『あ、父さん!母さん!』
『湊……』
『湊』
『何でお前は生きているんだ?』
『え?父さん?』
何でそんなこと言うんだ?
『私たちを見捨てたクセに』
違う。
ぼくが見た時には父さんたちは死んでた。
見捨てたりなんかしてないんだよ。
「湊!!」
目を覚ますと水嶋くんがいた。
心肺そうな顔をした。
「大丈夫か?」
「……」
どうしよう。
うまく呼吸ができない。
「はぁ、はぁ、はぁ」
「湊?父さん!」
「騒がしい。友達が寝てるんだろう?どうした?」
「わかんない。さっきから魘されてて目覚したら」
「湊くんだったかな?大丈夫だよ。大丈夫、ゆっくりと息してごらん」
*************
それからしばらくして過呼吸は治まった。
「湊、ゆっくりしてていいから」
「ごめんね」
「明日。俺も行くから」
水嶋くんとともに病院へ。
いつもぼくが行ってるかかりつけ。
「いつもの精神的なものからですよ。薬出しとくから」
面倒くさいからか、この医者はいつもこうだ。
「……紹介状を書いてくれませんか?この名刺の病院で看てもらうので」
「何を!?」
「私は精神的なことは専門ではない。しかし、この子が苦しんでいるのに薬だけ出すなんてことしかできない医者には任せれない」
「お、親父?」
「湊くん。私の知り合いに精神的なことが専門の医師がいるんだ。看て貰わないかい」
正直。
誰でも良かったか。
治してくれるなら。
車で30分。
「水嶋とお前の息子は出ていけ」
そう言って診察室から追い出した。
「さてと水嶋親子 はいなくなったし。ゆっくりでいいから話してくれるかな?」
だれにも話したことのないぼくの過去を話すことにした。
ぼくの父さんたちは会社を経営していた。
『矢嶋製薬会社』。
おばさんたちから聞いたから間違いない。
原因不明の爆発事故が起きて沢山の人が亡くなった。
たまたまそこで遊んでいたぼくの近くで大爆発が起きた。
誰かが言ったんだ。
父さんたちがあっちにいるって。
だから。
そこに行ったら……。
『キミだめだ!そっちは』
そこで見たのは血だらけの父さんと母さん。
ぼくは怖くて逃げた。
必死に逃げた。
いつの間にか気を失っていたらしくて。
目を覚ますと。
おばさんたちがいて。
中学卒業するまで一緒に暮らしていた。
今ぐらいの時期に体調を崩すようになってしまったこと。
父さんたちが俺を夢の中で責めてくる夢をみること。
全て話した。
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