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第2話

「海…。」 ビジネスホテルに入り、一人溜息をつく。 そのまま、体を横にしてベッドに倒れる。 こっぴどくフラれたって言うのに、頭に浮かぶのは海の顔。 この3年間、ずっと海と一緒だったから。 「辛いよ…海。俺はずっと、好きなのに。」 恥ずかしくてあまり口にできなかった言葉。 海がいないときばっかり口にして。 海の前では口に出せなかった。 だけど、海ならわかってくれると思ってった。 俺が親に捨てられて、しばらくの間話せなくなったことを知ってる海なら。 愛しても愛されないことを覚えて。 人と関わることを恐れた俺のことを側で見ていた海なら裏切らないって勝手に思ってた。 でも結局、こうなんだよな。 「…本当にこのままいなくなっちゃおっかな。」 親に捨てられた日と同じことを言う。 心の痛みはあの日とは違うけど。 『俺がいんだからそんなこと言うなよ。』 少し悲しそうに、でも真剣に俺に海は声をかけてくれた。 だから俺は生きようって決めたのに。 もう、そんなふうに俺を気遣かってくれる、俺に生きててほしいという人はいない。 「その海に苦しめられるなんてね…笑えないよ。本当に。」 まぁもう、どうだっていいや。 もう俺を必要としてくれる人はいないなら―― 苦しみながら生きる必要はない。 ゆっくりと目を閉じる。 微かに、頬を涙がつたった感覚があった。 泣いているのか。なんで泣いているのか。 それすらも、もう考えたくないな。 そう思い、俺はそのまま意識を手放した。

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