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第4話

「俺の家!一緒に住もう?」 俺の手を握りしめたまま立ち止まり、海が言う。 高校に入って海は一人暮らし始めてるけど…絶対俺いたら迷惑じゃんか。 でも―― 「いい…の?」 でも一人でいたくない。 一人に…なりたくない。 そう思い、呟いた俺に海が笑顔を見せる。 嬉しそうに笑ってる…。 嫌じゃ…ないんだ。 「じゃ、今日から改めてよろしく!」 差し出された海の手を握る。 海の手は暖かくて優しくて。 荒れてた俺の心を包み込んでくれた。 ******* 「月、大事な話があるんだけど…いい?」 海が少し固くなって俺に聞く。 海らしくないな…どうしたんだろ。 「いいよ。どした?」 海に手を引っ張られ、ソファーに並んで座る。 少し、海が震えてるのがわかる。 海がなんで震えてるのかとかはわからないけど。 俺が辛かったとき助けてくれた海のことを、俺も助けたい。 そう思い、海の手を握り返す。 海はびっくりしたようにまた震える。 だけどすぐに、背筋を伸ばして俺と目を合わせた。 「月、俺。月のことが好き。付き合ってください!」 ******* 「月!好き、付き合って!」 「わかったって、考えてるから。」 最近、毎日のように海に好きって言われる。 嬉しいし嫌じゃない。 だけどやっぱり、いつか捨てられるんじゃないかって思うと。 もう一回捨てられても普通に生きられるほど強くはない。 「ねぇ、海?俺のどこがいいの?」 ずっと疑問だったこと。 かっこよくもないしかわいくもない。 人に好かれるわけでもないし、何か特別なことができるわけでもなんでもないのに。 「んー、全部?月が好きだからどこって言われてもね。一つだけっていうなら、優しくて可愛いとこ!」 それ、一つじゃないじゃん…。 心の中でそうツッコミながら気持ちは晴れやかだった。 海は俺のこと捨てないかな…? 「海、返事していい?」 「えっ、今!?ちょ、ちょっと待ってね。深呼吸するから――」 わからないけど。 きっと海なら側にいてくれる気がする。 ずっと―― 「月、返事お願いします。」 「海。俺からも言わせて。付き合ってください。」 頭を下げて手を差し出す。 差し出した右手が情けなく震えてるなんてわかってるけど。 海はそんな俺の手を取った。 「うんっ!月、大好き!!」 そのままギュッと抱き着いた来る海に念を押す。 「俺、可愛いげもないし取り柄もないけどほんとにいいの?」 「うん!だって、そのままの月が――」 ******* ピピピピピピピ けたたましいアラームの音で目を覚ます。 夢…か。そりゃそうだよな。 もう海は俺のことなんてなんとも思ってないんだから。 ぐしゃぐしゃになった前髪をかきあげる。 「…もう行こ。」 海が嫌がってたから最近、あんまり前髪はあげなかったけどもういいわけだし。 そう思って前髪をあげたまま、部屋から出て。 夜の暗い街に出て行った。

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