｢お兄さん！一人？もしよかったら、お店寄ってかない？｣ ｢あー、ごめんなさい。用事あるので…。｣ ホテルから出たはいいものの、迷子になって立ち尽くしていると見知らぬ女に声をかけられた。 店ってことは…勧誘か。 めんどくさいな、と思い適当にあしらう。 だけど、相手は全く諦めずしつこく声をかけて来る。 ｢えー！？さっきからずっとここいるじゃん！ね、ちょっとだけでいいから！｣ 挙げ句の果てには、そういいながら俺に腕を絡ませてきた。 ――嫌だ。 咄嗟にそう思った。 海とだって腕を組んだりすることはほとんどなかったから気持ち悪い。 ｢ごめんなさい。離してください。第一、俺に声かけるよりもっと声かけるべき相手がいると思うよ？カッコイイ人に声かけなよ。｣ そういいながら少し強引に腕を引きはがす。 付けすぎの香水の匂いは俺にとって苦痛でしかない。 ｢え。もしかしてお兄さん、自覚ないの？もしかして、普段前髪下ろしてるとか？自覚ないイケメンは罪だよ！？｣ なぜかその女は目を輝かせてそういった。 俺がイケメン？ そんなわけないじゃん。 海だって俺のことは明らかにお世辞で、可愛いとしかいわなかった。 周りにだって｢なんでお前が海の近くにいられるのか｣って、嫌というほど言われてきたし。 第一、髪をあげるかどうかでそんな印象は変わらないだろ。 ｢はぁ…。｣ もうめんどくさくなって適当に返事をする。 そんな俺を見て、女はチャンスと思ったのかさらに声をかけて来る。 ｢ね、ちょっとだけ！ちょっとだけでいいいから来てくれない？お願い！！！｣ もうどうすりゃいいんだよ。 いつもは海が声をかけられるし、綺麗にかわしてる。 心の中で頭を抱えてると、聞き慣れた声がした。 ｢ごめん！遅れた！｣ 声のした方を振り向く。 そこには――