｢お前っ！俺、マジで心配したんだからな！？｣ 携帯を手に取った俺は、虎に連絡を入れた。 泣いたふりをして電話をした結果、焦りに焦って虎が俺の家にやってきた。 普段、泣いたりしない俺が泣いているように聞こえて焦ったらしい。 ｢悪いって…でも今、精神的に辛いんだって。｣ ベッドに仰向けになりながら呟く。 自分が撒いた種だっていうのは分かってるけど。 隣に月が居ないのがこんなに辛いなんて。 ｢…月は？どこ行ったかわかる？｣ 俺が本気で参っているのがわかったらしく、優しく諭すように聞いてきた。 わかってたら追いかけてるよ…。 ｢わからない。でも、行く場所ないと思うから多分どっかのホテル。｣ ｢そう。なら、月が落ち着いたりするの待ってでどう？｣ 俺の頭に手を乗せて、虎が言う。 虎の言っていることもわかる。 だけど―― ｢月は、誤解してるんだ。俺がもう、月のこと好きじゃないって…｣ ｢はぁ？海、一体何て言ったんだよ。｣ 眉間にしわを寄せている虎を横目で見る。 言いすぎた自覚はあったけど、月に嘘を見抜かれるのは早いから…。 ｢新しく、好きな人ができたって言った。｣ ｢…月が信じたのか？一体どんな顔して言ったんだよ。｣ 顔…？ 好きな人ができたって言ったとき、俺は月のことを思い浮かべてた。 だからきっと、幸せそうな顔をしてたんだと思う。 いつもは抑えてるけど、全く抑えなかったからきっと凄く幸せそうな顔。 ま、自分でじゃわかんないけど。 ｢月のこと考えてた。キスすると照れながらも笑ってくれるとことか。エロい顔とか――｣ ｢ちょ、わかったから！…多分だけど、月はその顔は好きな相手を思い浮かべてると思ってるよ。｣ どういうことだよ。 好きな相手は月なんだから。 そしたらなんで出て行った？ そんなことを考えてたら、俺の思ってることを察したのか虎が少し笑って口を開いた。 ｢月は、海が自分じゃない誰かを本当に好きになったと信じて、しかもその相手を考えて幸せそうな顔をしてると思ったんだよ。｣ そういわれると納得が行く。 そう思ったとき。 突如、虎の携帯が鳴った。 携帯の表示を見て動きを止めた虎に声をかける。 ｢どーした？出なよ。｣ ｢あー、うん。｣ ちょっと困ったように虎は電話に出た。 ｢もしもし…うん。……俺？今家居ない。…うん……友達の家。………じゃ、迎えに行くから同じとこでいい？……確認しとく。……ん…すぐ送る。……どっか中で待ってろよ。…ん、じゃな。｣ 誰と電話してるのかも何もわからなかったけど、何となく相手が俺の家に来るのはわかった。 虎の友人なら別にいいけどさ…。 月と虎以外の奴は基本的に家に上げたくない。 特に、月が居ない時なら尚更…。 ｢ここ、ちょっと連れて来てもいい？｣ 電話を切った虎が少しだけ申し訳なさそうに聞く。 そう聞かれると、呼び付けたあたり断れない。 ｢いいよ。｣ ｢ありがと。じゃ、迎えに行くから。｣ そう言って虎は家を飛び出して行った。 (next→月side)