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第11話
そこまで聞いてたのか。
虎との電話のやり取りを聞かれていたことに恐怖を感じる。
「累希さんには…関係ないっ!」
震える声しか出ない自分が、情けなくて仕方がない。
こういうことがないように、ずっと守ってくれてた海に俺は何が出来てたんだろう。
『好き』って言葉も満足に言えなくて、愛を貰ってばっかで。
そんなんじゃ、海に飽きられるのは当たり前だ。
「…あっそう。なんか、萎えた。これからもっと効果出てくると思うけど一人で頑張ってねー。」
パッと服を離され、地面に座り込む。
累希さんはそのまま俺を放置して立ち去って行った。
安心した。
海にもう愛してもらえなくても、海じゃない人とエッチをするのはどうしても嫌だったから。
「と、虎に電話しなきゃ…。」
震える手で携帯を取り出す。
何件も不在着信が残ってる。
全部、虎からだ。
急いでかけ直そうと思ったとき、携帯が光った。
「あ、虎…。」
虎からの電話に出る。
『月!?どこ行ったんだよ?』
「虎…助けて…怖いっ!近くの公園に…いる……からっ…!」
涙が零れて言葉が途切れ途切れになる。
虎は、電話を繋げたまま走っているみたいだった。
『わかった、すぐ行くから。』
「電話っ!切らないで、お願い…」
『わかってるから…落ち着いて?』
虎の優しい声に安心してまた涙が零れてくる。
俺は、懺悔をするかのように虎に話しはじめた。
「俺ねっ、海にフラれたの。海、好きな人が出来たんだって。俺、ふざけんなって思ってたっ…でもねっ……俺、まともに…好きって伝えられなくて…グズッ…フラれて当たり前で…っでも、まだ、まだ…大好きなのにっ……グズッ…!」
情けない俺の話を、虎はずっと聞いてくれた。
何も口出しすることなく…。
「月!」
話終わると、虎の声が聞こえた。
電話越しじゃなくて、後ろから。
「虎…。んっ…。」
泣き崩れた俺を、虎はギュッと抱きしめた。
薬の効果か何なのか、変な声が出て口を塞ぐ。
虎にはいろいろ相談したりしたことあるけど、恥ずかしいものは恥ずかしい…けど………。
「どうした?…月?」
「さっき、変な薬飲まされて。なんか、触られると気持ちいの。ふわふわするっていうか…。」
ぎゅっと虎の服を掴む。
人肌が恋しいというか…。
よく知らない人だったら嫌だったけど、信頼してる虎ならいいかなって思ってしまう。
本当だったら、海がいいんだけど。
もう、海は無理だろうし。
自分なりに一生懸命、虎を誘ってみる。
「とらぁっ…助けて。おかしくなりそう……とらぁ俺じゃ…だめ?」
「月っ……落ち着け、しっかりしろ。お前が好きなのは誰?…俺じゃないだろ?」
優しく諭すような虎の声にさらに涙が零れる。
わかってる。虎の言いたいことはわかってるし、正しいと思う。
でも、今俺にそんなこと言われたって…。
「海が好きっ…大好きっ…でも、でも…!海じゃないなら虎しかいないもん…俺にはっ二人しかいないのにぃ…お願い…俺を……助けて。苦しい、もう………。」
「月………。」
薬のせいなのか、一人だと実感したから苦しいのか…。
何にもわからないけど、苦しくて…。
「お願いっ…俺を……愛してよ……。」
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