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第12話

虎は口元に手を当てて、目を泳がせている。 もう少しおしたら、俺とシてくれる…? いつもだったらこんな馬鹿なことは絶対考えない。 大好きなのは海だけだし、そういうのだって海に誘われることばかり。 でも、海がいないなら壊れてもいい。 それに、薬のせいにしちゃえばいい。 「お願いっ!とらぁ…俺のこと抱いて……絶対、満足させるから……」 ぎゅっと、虎の腕にしがみつく。 虎が息を呑んで震えたのがわかった。 「月…一回離れてくれ。俺、殺されるから…。」 「嫌だっ!お願い…俺じゃダメなの…?」 「と、取り合えず家行こう!来ていいよって言われてるから…。」 腕にしがみついた俺を引きはがし、虎は優しく俺の手を握った。 「いや……」 なんで嫌なのか、何が嫌なのかすらもわからなくなってきたけどとにかく嫌だった。 虎は、少し苦笑いしながら俺を引っ張って近くの道路まで出て行った。 近くに止めてあった車の助手席に俺を乗り込ませると、虎は運転席に乗り込んだ。 「シートベルト締めて、危ないから――」 「虎がやって…お願いっ」 もう何をする気にもなれず、すべてを虎に任せる。 虎は小さく何かを呟いて、シートベルトを締めてくれた。 「寝てていいよ。多分、そしたら楽になる。」 「ん…」 虎は俺が飲まされた薬が何か勘づいているのかそう言った。 実際、俺はもう疲れてて眠かったし虎の言葉に甘えて目を閉じた。

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