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第14話

「俺は帰るな。仲良く、してくれよ。」 虎は、ひらひらと手を振って去っていった。 ありがとう、と俺も虎に左手を振る。 海はまだ少し不満そうに虎を見ていたけど、海の左手は俺の右手をぎゅっと握っていた。 「海……」 「中入ろう。月が風邪引いたら困る。」 海は手を握ったまま歩き出した。 海と何回か肩が触れ、ドキッとする。 「か、海…手離そう?もう室内入ったわけだし…」 ちらっと、海に視線を送る。 俺より背が高い海を上目遣いで見つめる。 海はしばらく考えた後、フリーになっている右手で俺の左手首を握りしめて壁に押し付けた。 壁ドン…の絶対逃げれないやつ。 いつもエッチするときとか、そういうときにやられるやつ。 「離したくない。………月は嫌?」 「いや…ではない。」 海に見据えられ、少し恥ずかしくなって下を向く。 そうすれば海は右手を離して、その手で顔をあげさせられる。 こうなったら俺はもう逃げれない。 ――正しくは逃げれるんだけど逃げれない。 それを知ってる海は嬉しそうに笑った。 「…好きだよ。愛してる。傷つけてごめん。」 そういいながら海は俺にキスをしてきた。 いつもとは違う、少し遠慮がちなキス。 だからこそ、海の思いが伝わってきた。 俺も、口にしなきゃ。 もう、痛いくらいわかった。 思いは口にしなきゃ伝わらないって。 いつまでも過去に縛られてちゃいけない。 もうあいつらはいない。 俺には海がいるから。 「俺も……好き。海のこと大好き。」 「っ!本当…?」 顔が赤くなっているのが自分でもわかる。 海は息を呑んで、俺をぎゅっと抱きしめた。 海の声が少し震えていて、顔をあげようとするとさらに強く抱きしめられる。 「愛してる、月。」 表情は見れないままだけど、恥ずかしがらずにそう言ってくれる海に嬉しくなる。 俺は恥ずかしいけど、海に喜んでもらえるなら俺も伝えたい。 「うん。俺も………あ…愛してる…よ。」 パッと、体を離され慌てて顔を隠そうとするが海に両手を捕まれ戸惑う。 りんごのようになった俺を目を合わせて海はいつものように、少し激しくて、でも優しいキスをしてきた。 「月…可愛い。」 「んっ…好き…」 好き、と伝えれば海は嬉しそうに笑う。 そして、甘く溶けそうなキスをする。 「んっ…ぁ……かい……っん…」 「…かわい…月…」 海の甘すぎるキスに腰が抜けて立てなくなる。 そんな俺に海は少し笑って、さらにキスをして来る。 「まっ……ん…も……たてなっ……」 絶え絶えに告げる俺に海は一回キスをやめる。 そして、お姫様抱っこで運ばれる。 いつもだったら絶対抵抗するけど、今日は甘えたい。 今日は、というよりこれからは少し甘えられるようになりたい。 「月…今日いつもより堕ちるの早いよ?どした。」 「えっと…それは………」 歯切れの悪い俺に、海は怪訝な表情をした後意地悪な笑みを浮かべた。

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