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第15話
「月、もしかしてそういう気持ちだった?」
「えっ…と………いや……なんでも…ない…」
公園であったことを、伝えるべきなのかわからなくて俯く。
海にはいつも止められてたけど、やけくそになって夜の街に出てたこと。
そのときに前髪をあげっぱなしだったこと。
思いっきり騙されて怖い目に遭って、挙げ句の果てにキスをされて変な薬を飲まされた……なんて。
「…月、何があった。」
鋭い目つきで海に見つめられ震える。
口を開いて伝えようとしても音は出ない。
そんな俺に海は小さくため息をついた。
「俺は信用できない?」
「違うっ!そうじゃ……なくて……」
悲しそうに笑った海に慌てて声を出すが、続けることができない。
海のことは信頼してる。
俺に伝えてくれた言葉が嘘じゃないっていうのは、もうわかってる。
時間はかかったが、躊躇いがちにゆっくり口を開く。
「……海を、う…裏切ることした…から…」
「なに…を?」
目を閉じて震えた声で聞く海に、これ以上隠していたくないと思う。
意を決して、海を見つめ口を開く。
「俺…一回海に助けてもらってここから逃げた後、やけになって夜の街に出て。もう海に言われたことなんて知らないって思って…前髪上げてて。そ…そしたら、男の人に話しかけられて……気持ち悪いからトイレ案内してほしいって。で…で、それが嘘で。…俺騙されて、キスされて。なんか変な薬飲まされて…………それから触られると凄い気持ちいっていうか。」
「…………。」
黙り込んでいる海に不安が募る。
裏切るつもりはなかったといえ、裏切ったのは俺だから仕方ないのはわかってる。
でも……捨てられたくない。
「ごめんなさい……裏切ってっ…ごめんなさいっ!」
「……虎とここ来るまで良く平気だったね。キスしただけでこんなに…堕ちてるし。効果出てきたときどうしたん?」
眉間にしわを寄せて、海がけだるそうに話す。
呆れられてる…。
本当に捨てられるんじゃ――
「お願いっ!捨てないで!!もう海と離れたくない!お願い…なんでもするから………」
ぎゅっと海の腕を掴む。
海は、振り払うことこそしなかったものの悲しそうに笑った。
多分、俺が虎にねだったことをわかってる。
「なんでも…か。」
海は目を閉じて少し考えた後ゆっくりと口を開いた。
何を考えているのかがわからなくて怖くなり強く目を閉じる。
ふっ、と海が笑ったのがわかった。
恐る恐る目を開ける。
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