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第3話 保健室

「すぐに俺のブロックを外せ」  誰もいない保健室のベッドに連れ込まれ、押し倒されると水樹はアリスを見下ろしながら睨みつけた。自分よりも数倍大きい水樹の身体は重く、やすやすと逃げられない。 「嫌だ。なんでそんなに俺に構おうとするんだよ? αのおまえがβの俺といるだけで、目立って迷惑だ」  アリスは強気に水樹へ反抗する。ここまで水樹にはっきりと意思を伝える人間は恐らくアリスしかしかいない。水樹の親ですら、水樹を甘やし、拒絶などしたことはないだろう。  どうしてわかってくれないんだろう。αならΩと(つがう)のがベストだ。  昔は仲が良かったが、互いのバースが分かってから、チマチマとちょっかいをかけてくる水樹がうざったい。 「バースなんて関係ない。俺はおまえが好きだ。いつもおまえはβだから無理だと突き放すよな? なんでなんだ? 俺もアリスも同じ人間だろ?」 「はっ、同じ人間なら雅也みたく優しくなれよ。俺は水樹みたいな典型的なαが1番嫌いなんだよ。悪かっ、ンッ!」  言い終わる前に唇を重ねてくる。  (本当にこいつは高校生なのかよ?)  昔はアリス、アリスと可愛い顔してついてきたはずなのに、今じゃアリス、アリスと命令してくる最低な奴に変わってしまった。 「いいから、絆されて受けいれろよ。アリス、おまえが好きなんだ。愛してる」  耳元で甘く囁かれ、痺れるような感覚におそわれる。胸の突起を摘まれ、じんじんとまだ敏感な部分を舐める。 「絆されない。俺はおまえを愛して、なぁ、っ!」  首筋を舐められ、ゾクゾクとした悪寒が這う。両手は拘束され、ひとつに纏められている。 「愛してるっていえよ、アリス」  水樹はズボンに手を突っ込んで、半勃ちのモノを扱き始める。自分の若さ故に反応してしまうのが憎らしい。  水樹は昨日からおかしい。  いつもはからかって傍にいるだけなのに、何かから逃れるように急に身体を求めてきた。濡れもしない孔にたっぷりとローションを塗りつけ自分のモノにしようと犯した。 「……なんで、こ、ぁあ……ッ」 「チッ、強情だな。……アリス、おまえ、俺と付き合わないなら、雅也を学園から追放するぞ。それでもいいんだな?」  はぁ? 雅也を追放? 「ふっざけんなっ! 雅也は関係ないだろ!」  流石に怒りがこみ上げてしまい、身体を起こそうとするが水樹の重みで身動きできない。 水樹は片手で自分のズボンを手慣れな手つきで脱がしていた。  くそっ! どけよ! αが構うな! 「だったら大人しく俺と付き合え。それが嫌ならセフレになれよ」 「セ、セフレ!? 」  高校生が言う言葉ではない。  なんで自分が水樹のセフレにならないといけないのか意味がわからなかった。 「……い、嫌……ッ……」 「嫌って言うことは、雅也を見捨てるんだな。アリスはひどい奴だ。今日づけで雅也を辞めさせるか?」  水樹は露わになった棒をぎゅうっと握り締める。水樹に逆らわない奴はいない。  雅也の朝の優しい笑顔が思い浮かぶ。 「……身体だけだ。それだけだ。それ以外、何も求めてくるなよッ…… !」  どうせαだ。  満足したら捨てられる。  将来は瀬谷家を背負って先導する水樹にはβの番なんて必要ない。  住む世界が違うことにいつか気づく……。  自分が身体だけ繋げれば周りを巻き込む必要はなくなる。どうせΩのように妊娠する可能性もない。  最低だ。水樹なんて、嫌いだ。 「アリスにしてはいい答えだな」  水樹は寂しげに笑って、キスをしようとした。 「ま、まて!」 「なんだよ?」  水樹の唇を手でガードする。 「キスは無しだ。キスは流石に好きな奴としたい」 「嫌だね。キスも込みだ。アリス、我慢しろ」  手をどけて、水樹は貪るようにキスをした。  ああ、自分はこの獰猛な男に高校生活をめちゃくちゃにされるんだなと力無くアリスは思った。

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