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第32話 驚愕の事実
「ナニコレ、盗撮が趣味なの?」
「デートをしていたら君達が観覧車に乗るところをみたんだよ。まさかキスするとは思わなくてね」
アリスは保健室に連れ込まれ、易々とベッドに拘束されてしまっていた。両手は纏めて括り付けられ、膝を折り、大きく拡げられた股の間には西園寺の身体が入りこむ。そして悠長に構える西園寺を睨みつけた。水族館に行くのは雅也しか話してないはずだ。
「犯罪だぞ! こんなこと、やめろ!」
「まさか門倉がキスするなんて、アリスちゃんにもびっくりだよ。色仕掛けでもしたの? それとも、ものすごいテクを持ってるのかな?」
「うっさいわ! 俺は地味で平凡な男子高校生だよ! 門倉とはなんにもない! 勝手に告白されただけだ! 早く解放しろ!」
前回は水樹が助けに来てくれたのに、今日はやってくる気配もない。
(俺、このまま西園寺のマグナムをペロペロしなきゃならないのか? そうなら噛みちぎって逃げたい……!)
カチャカチャと下げられる西園寺のベルトを注視してしまう。水樹と同様の膨らみが下着からわかる。
性欲ゴリラの水樹から解放され、キス魔の門倉に迫られ、変態西園寺にフェラを強制されなきゃならないのか理解できなかった。
首を振って、西園寺の要求を強情につっぱねる。
「ふーん、でも門倉、嬉しそうにLINLINの操作方法を僕に聞いて来たよ? あの門倉が他人に興味持つなんて気になるじゃん。本気で水樹から乗り換えたってことだよね? まぁ、水樹もお愉しみ中だし、僕もアリスちゃんにお相手して欲しいな」
笑みを浮かべて西園寺はもぞもぞと毛布をかけて、下半身を丸出しになる。
「おたのし、み……? はぁ? 水樹、旅行中なのか?」
水樹、優雅に海外旅行かよ。
ずっと南の島でもいいからいて欲しい。いますぐ、助けに来て欲しいという淡い思いもある。
「ええ! なにも知らないの? 水樹は婚約者とセックスしてるんだよ。正解に言うと番を交わそうと部屋に監禁されてるんだけどね。ほら、この動画」
じりじりと迫る西園寺は動きを止めてスマホを出して、画面を目の前にみせつける。そこには裸の二人が重なり、毛布に被さり小刻みに動いているのが映っていた。
その悍ましい光景に悪寒が背筋にはしる。
「…………な、な、な」
「水樹もねぇ、「番は作らん!」とか言いつつ、結局、運命には逆らえなかったてことさ。この子も一生安泰だし、よかったね」
西園寺は画面を閉じて、艶然と微笑んだ。
「そんな馬鹿な話あるかよ! 二人の同意は? それになんだよ、この動画!? 悪趣味にも程があるだろ! おまえたちには倫理観というものがないのかよ!」
「倫理観……? きみも面白い事を言うね。優秀な遺伝子を残すんだよ? 子孫繁栄、輝かしい瀬谷グループの未来を先頭に立つ水樹の番をみつけたんだ。それだけでとっても意味がある行為なんだよ?」
「ば、馬鹿馬鹿しい! 西園寺、おまえ、心から好きな人が出来たら一生後悔するからな。俺は絶対にそう思ってる! そんなの水樹の為じゃない! それは、ただの動物的交尾だ!」
その言葉に西園寺は整った弓のような眉をピクリと動かす。俺のワイシャツのボタンを外していく手が止まった。ふにっと太腿には西園寺のミラクル棒の感触が伝わり、ぞわっと恐怖がこみあげてくる。
「気に入らないなぁ。……門倉が君のこと好きな理由も分からなくないけど、そうやって正論を振りかざされると苛つくんだよ」
「正論じゃない! おまえは恋なんかしたことないから、そんなことを言えるんだ!」
バタバタと足で西園寺の腰を蹴ろうとするが、びくともしない。
さきほどの微笑みは消え失せ、西園寺は陰鬱な表情に変わる。
怖い、怖い、怖い!
はやく帰りたい。帰って、のんびりベッドで永遠に寝たい!
「アリスちゃんこそ、恋はしたことあるの? ちゃんと水樹にしてた?」
西園寺は露わになった乳首をつまんで、痛みが走る。
「……いたっ……俺が……水樹に? なんで?」
「だってセックスしてたんでしょ? それともきみたちも性欲処理だった?」
(…………おれが、水樹に恋し……てる……?)
恋をしていなかったら、水樹との行為は単なる生殖行為以外の何者でもない…………。それでも自分はβで子供は産めない。そして、そういう行為は愛がなければしてはいけないのだ。
「ね、だから僕の舐めてよ。さっきのこ、イマイチだったんだ。同じだよね?」
「……やめっ……」
「――西園寺、アリスから離れろ!」
唐突にカーテンの仕切りが引かれ、眼前には長い脚が見えた。
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