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おまけ 甘露と蜜

「あ、あ、あー……、や、や、水樹いっちゃう……」  甘く強請るような声が寝室に響く。  アリスは艶やかな白い尻を水樹に鷲掴みにされながら、深い快感に酔いしれていた。小さな愚息はぐっしょりと濡れ、精液はだしきって柔らかい。それでも何度と絶頂を迎えて、小さな愛撫ですら達してしまう自分がいた。 「イけよ、アリス」  四つん這いに尻を突きだすアリスに、水樹は後ろから雄茎を根元まで挿入させる。赤黒く脈打つ肉棒ははち切れそうなぐらい硬い。アリスの尻を持ちあげ、小刻みにくねらせて逃げようとするのを水樹は両手でしっかりと捕まえていた。 「だめ、はいっちゃ、だめっ……」 「アリス、もう全部挿入ってる。……っ、気持ちいいか?」  アリスは首を縦に振る。  後孔は滔々と水のように濡れて、肉を引き込ませようと雄を健気に締めつけていた。揺すってやると、ピクピクと腹から痙攣して太腿がだらしなくひらく。股からはパタパタと残滓が垂れ落ちて糸を引いていた。  水樹はアリスの唇に深く口づけると涎が口許を伝い落ち、敏感で淫靡な身体に水樹の情炎がさらに燃えていく。 「あ、あ、あー……」  あれから数年、アリスと水樹は互いの家をでて一緒に暮らしている。水樹は弁護士、アリスは地方公務員として区役所で働いている。二人とも朝がはやく多忙なのに、毎夜の営みは欠かせない。性欲が尽きない水樹に、毎晩アリスが泣かされるという具合だった。 「あと一回やるぞ」 「あ、あしたも早いから、んっ、ここまで……」 「駄目だ、足りない」 「……あ、あ、ん、ん……、だめ、だめ……」  アリスの顔は蕩けて、深い悦楽に浸っている。小さな窄まりはきゅうきゅうと雄肉を締めつけ、水樹から精子を吸い上げようとしていた。 ******  ――翌朝、二人は珍しく仲良く起きていた。  丸みのあるダイニングテーブルに、ホットサンドとコーヒー、サラダ、そしてコーンスープを並べて、アリスと水樹は向かい合って朝食を食べている。ホットサンドにはツナマヨが入っており、アリスは美味しそうにぱくつく。 「水樹、夕方は(まい)(ひかる)が来るからおさわり禁止な!」 「ちっ、またお迎えかよ。おまえ、人が良過ぎるんじゃないか?」 「しょうがないよ、頼まれたんだし、隣なんだから別にいいじゃん。紫苑だって忙しいんだからさ」  舞と輝は紫苑の双子の子供だ。 紫苑は結婚し、門倉と姓を変えた。そして、門倉の体質など話し合った末に体外受精にて二卵性の双子を出産して慌ただしい毎日を送っている。首には未だにチョーカーをつけ、番わないと紫苑は決めたらしい。『(つが)わなくともアリスみたいになりたいんだ』と、二人の赤子を抱きながら柔らかく笑う紫苑は強かった。  その様子に西園寺が感動して涙を流した。西園寺は毎日お見舞いに通い、看護師からはパパと間違われたので、水樹が門倉にしっかりしろと怒った始末だ。  そんな紫苑達もアリスと同じマンションに引っ越し、何かあれば助けられるようにとアリスは都度連絡を取り合っている。紫苑は絵本作家で、締切に追われる日はこうしてアリスが保育園に迎えにきて門倉が帰ってくるまで預かっていた。 「アリス、またニ歳児に説教されてたな」 「うるっさい! それはいいの。とにかく、今日はハンバーグにするからな!」  水樹が作ったホットサンドをがぶりと噛みつきながら、アリスはきっと睨む。ついさっきまで、しどけなく胸の中で寝ていたなんて想像できない。 「おまえ、夜はあんなに可愛いのにな……」 「あ! セクハラ禁止!」 「はいはい、今日は早く帰ってくるから、一緒に食べればいいんだろ?」  水樹はアリスの口許についたツナを指で拭って食べた。ぷりぷりと怒りながら、優しい水樹にアリスの顔が緩んでしまう。 「……なんだかんだで、あっという間だな」  ふうっとアリスがコーンスープを飲む。  生クリームを垂らし濃厚な味に仕上がったスープは水樹お手製である。アリスが食べたいと言うと、水樹はすぐに作ってくれる。それほど水樹はアリスにあまい。 「そうか?」 「そうだよ、雅也は西園寺と海外行っちゃうし、紫苑は双子の赤ちゃん産むしさ。あ、如月はプロゲーマーだっけ? 皆すごいよね……」 「おまえは平々凡々と公務員だしな」 「普通が一番なんだよ。安定が欲しいの」 「安定ね……」  水樹はペリエを飲み流す。  味覚は殆ど取り戻し、二人とも料理が趣味となっている。朝食は水樹が作り、夕飯は帰りが早いアリスが用意して味を楽しんでいた。 「水樹といると安定もクソもないけどな」 「はっ、それはおまえだろ。この前も同僚の男と……」 「それは誤解だって言ったじゃん。たく! 水樹は嫉妬深すぎるぞ」  アリスはふくれながらスープを飲み干す。先週、同僚と飲んだあとに送ってもらったのを水樹はまだ根に持っていた。弁護士で残業中の水樹を呼ぶのも気が引け、遠慮してしまい、うっかり最寄り駅で鉢合わせしてしまったのだ。 「あの男、デレついてたぞ?」 「たく、しょうがないなぁ……」  ぶつぶつ文句を言う水樹にアリスは顔を寄せ、濃紺色のネクタイを引っ張る。水樹の唇にコーンスープの味がうっすらと移る。 「……っ」  水樹も負けじとキスを深めていく。 「…………んんっ、ん」    唇が離れると二人とも名残惜しそうだ。時計の針はすでに半を過ぎている。それでも二人は熱く視線を絡ませる。   「アリス、愛してる」 「水樹、俺も愛してる」  危うくアリスのシャツを脱がしそうになり、水樹が殴られそうになったのは言うまでもない。  ――

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