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第4話
「あまり自分を苛めるな」
それだけ言うと省吾は立ち上がり、木陰から出ていった。
その背中を見送る廉は、彼が何か落としたことに気づいた。
「甲斐さん、落としましたよ」
だが省吾にその声は届かないのか、振り向きもせずに行ってしまう。
廉は急いで立ち上がり、省吾が落としたものを拾いに草むらへ走った。
見つけたのは、飴玉。
500円硬貨ほどの大きさの、塩飴一個だった。
「何か書いてある」
飴の袋に、黒マジックで神経質そうな文字が並んでいる。
『くじけるなよ』
廉の胸は、いっぱいになった。
クールで感情をあまり表に出さない省吾の、精一杯のエールだ。
「甲斐さん、ありがとうございます!」
省吾の姿はもう見えなかったが、廉は思わずそう叫んでいた。
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