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第8話

 心地よいジャズの流れる中、ほろ酔い加減の廉は、まだまだ素面の省吾から仕事の話を聞いていた。 「それで、内装の海賊の人形なんだが」 「二体並んでる、ってやつですか」 「今一つ、迫力に欠けてな。よくできてはいるが、所詮は人形なんだ」 「前を通ったら、センサーで感知して、動くようにできませんか?」 「動かすのは難しいな。なにせ、もうでき上ってる」  う~ん、と廉は酒を一口飲んで考えた。 「じゃあ、目が光る、というのはどうでしょう」 「目か。なるほど」  それなら、複雑な回路は必要ない。  でき上った人形に仕込むことは、簡単だ。 「それで行こう。ありがとう、三好」 「こちらこそ。でも……」 「でも、何だ?」  再び、廉は酒を含んだ。 「いいんですか? 僕はプロジェクトから外された人間ですよ」 「私が考えたことにして、上に提案するよ。巧く成功して好評だったら、その時改めて、実は三好が発案した、と打ち明ける」  そうすれば、部長も三好を見直さざるを得ないだろう?  省吾の笑みは、どこかいたずらっぽい匂いをかもしている。  さすが社内一の切れ者、と廉は感心した。

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