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第11話

 省吾のタクシーがマンションに停まると、そのすぐ後に廉の車が追い付いて来た。 「甲斐さん!」  タクシーから飛び降り、廉は省吾に駆け寄った。 「三好。どうして」 「落とし物です!」  廉は、勢い込んでカードキーを省吾に手渡した。 「これはうっかりしてたな。ありがとう」  落ち着いた様子の省吾に比べて、廉はまるで懐いた犬のような表情だ。 「よかったら、上がっていくか? 何なら、泊ってもいい」  ホントですか! と言いかけて、廉は言葉を飲み込んだ。 「いえ、ご迷惑でしょうから」 「三好は私の部屋で、何か迷惑なことをするのか?」 「あ、いや。そういう訳ではなく!」  いいから上がっていけ、と省吾は廉の肩を抱いた。  親密な省吾の仕草に、廉の意思は瞬く間に崩れ去った。 「じゃあ、ちょっとだけ」  省吾に勧められるまま、彼の部屋に入っていった。

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