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兄貴の困惑4
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意外だったのは、若林先輩が早漏だったことだろうか。
僕の躰に触れる手やフェラなど、感じるところをすぐに見つけ出し、絶妙な力加減で触れる玄人ぶりを発揮していたというのに、ナカに挿入された衝撃ですぐにイった僕のあとに、若林先輩も引きずられる感じで熱い液体をぶちまけた。
『奥まで挿入した瞬間にイっちゃったね。トコロテンするとか、めちゃくちゃかわいい』
(――その言葉、そっくり貴方に返しますよ)
なぁんていう裏事情があったりと、他人との行為自体をそれなりに楽しませてもらった。
軽い打ち合わせを終えてから、若林先輩が音楽室を出ていったあとは、床に放置されたままの盗聴器の中身を確認する。録音が開始されたと思われるのは昼休み。しばらく無音が続いてから、5時限目の音楽の授業が録音されていたので判明できた。
早送りしつつすべて聞き終えてから削除して、ふたたび電源を入れてピアノの裏に貼りつけし直した。僕の靴音と音楽室の開閉の音のみしか拾っていない盗聴器を聞くことになる犯人の気持ちを考えると、気の毒でならない。
(毎回逢瀬の場所は僕が指定して、盗聴器の有無などを下調べするとして――)
今後、若林先輩と逢瀬の予定がある。行為の前に室内に盗聴器が仕掛けられていないか調べてからじゃないと、安心することができない。
そしてこの流れでいくと若林先輩と付き合うことになったとき、兄貴は責任を感じて止めに入ってくれるだろう。しかしながらそこには好きという感情がないままだからこそ、すんなりと別れるわけにはいかない。
数学のノートの隅っこに指先に力を込めて、小さな文字で走り書きした。
『宏斗兄さん大好き』
すれ違った僕らの気持ちは、いつになったら同じものになるんだろうか。
『宏斗兄さん愛してる』
いつになったら伝わるんだろうか。
『こんなに好きなのに、僕はこれからどうすればいい?』
不安定な気持ちが僕の足場を揺るがす。落ち着きを取り戻すために、目を閉じて集中した。焦りは禁物だ。馬鹿女から兄貴を引き離すことに成功しているんだから、計画を立てたことをすんなり実行し、兄貴を手に入れる未来を叶えるために尽力しなければ。
兄弟以上の関係を目指して、僕はまっすぐ突き進む――。
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