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兄貴の困惑10

*** 「辰之、話がある。ちょっと来い」  若林先輩が僕の首に赤い痕を残したせいで、自宅に帰って来た兄貴が首筋に指を差しながら、ここぞとばかりに僕に向かって突っ込んだ。 (あーあ。突っ込んでほしいのは、兄貴のち〇ぽだけだっていうのにな――)  目敏くキスマークを見つけた兄貴は、ムッとしながら僕の腕を引っ張り、強引に自室へと連れ込む。扉が閉まったのを機に、兄貴から口を開いてなにかを言いかけたので、すかさずベッドにあがって四つん這いになってみせた。 「辰之、なにしてんだ」 「なにって、こういうコトをするために、わざわざ僕をここに呼んだんじゃないの? 兄貴とのバック、すっごく気持ちがよかったしね。二回目とは思えないくらいに、僕のナカで弾けたでしょ。兄貴としては、正常位よりも気持ちよかったのかなって」  笑いながら流暢に説明し終えた途端に、兄貴の頬が真っ赤に染まった。図星をついた発言ができたことに満足しつつ、兄貴の枕に顔を押しつける。大好きな匂いを思いきり嗅いだ。 「そんなことよりも俺だけじゃなく、箱崎だって心配してるんだぞ。今日、部活が終わってからアイツに呼び出された」 「箱崎がどうして……」 「おまえの首のそれ、結構目立つからさ。若林先輩に呼び出されたあとにつけられたのがわかって、どうして黒瀬先輩は若林先輩を紹介したんですかって、箱崎に食ってかかられた」  兄貴のしょんぼりした声を聞いたせいで、仕方なく枕から顔をあげる。第三者が絡むと、余計に面倒くさくなるのは目に見えていた。それゆえに、僕の口からは文句しか出てこない。 「ただの友達の箱崎に心配されても、僕にはどうにもならないっていうのにね。全部兄貴のせいなのに!」 「そうだ、俺のせいだ。若林先輩に呼び出されたときに、どうして俺に頼らなかったんだよ」  ベッドにうつ伏せに寝転ぶ僕を無理やり起こしたと思ったら、ぎゅっと抱きしめてくれた。 「兄貴?」  苦しいくらいの兄貴からの抱擁で僕の頭がバグったのか、目の前がチカチカした。ただ抱きしめられているだけなのに、下半身はカタチが変わってしまう始末。呼吸すら普通にできなくて、口ではぁはぁしなければならないくらいだった。 「宏斗、兄さん……」

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