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弟の悲しみ12
「兄貴――」
ブレザーの裾を引っ張り、自分を見るように促した辰之。俺に注がれるまなざしは、痛いくらいに想いがこもってるように感じられた。だからこそ、この瞬間に告げなきゃと思いつく。
「辰之、俺は弟としてじゃなく、一人の男としておまえが好きだ。愛しくてその…このままじゃ、めちゃくちゃにしちゃうかもしれなぃ」
ところどころ声をひっくり返しながら告白した俺のセリフを聞いた辰之は、見惚れてしまうような満面の笑みを頬に滲ませた。
「兄貴とこれまですれ違った分だけ、思う存分にめちゃくちゃにしてほしい。宏斗兄さんの中に燻る気持ちを、僕に全部ぶつけて。今すぐに!」
互いの顔が導かれるように寄せられ、そして熱い口づけをかわした。辰之とキスするのははじめてじゃないのに、胸が苦しいくらいにドキドキして、おぼつかないものになってしまった。
それでも辰之はそんな情けないキスを、口角をあげながら受け続けてくれた。キスだけじゃなく愛撫だって若林先輩に比べたら、全然物足りなかっただろう。
「宏斗兄さん…うぅっ、俺をもっと求めて…ぁあん、すごくいいよ」
そのうち昼休みが終わり、5時限目がはじまっても離れたくなくて、放課後を知らせる合図まで、辰之を抱いてしまったのだった。
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